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中嶋幸司奮闘記
【コメディ 恋愛小説】

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中嶋幸司奮闘記-4

「なるほどねぇ、じゃあ智香はそこで苦しんでる愛那ちゃんにお料理を教えればいいんだね」
「まあ、そーゆー事だ」
「うんうん、智香なら適任だわ」
圭介の提案を快諾する智香ちゃんとその様子を見て頷く朱鷺塚。
「相沢先輩お願いします。愛那ちゃん、僕が教えようとしても言う事聞いてくれないので……」
秋兎が智香ちゃんに頭を下げると、本人の意向を全く無視した料理教室計画は実行に向けて動きだした。

「愛那の料理の練習をするのは分かってたけど、何であたしまで菜箸を手にしてるのかなぁ?」
「だって香織ちゃんもお料理苦手でしょ。だったら一緒に練習するのがいいかなぁって思ったんだけど……余計なお世話だった?」
釈然としない顔の香織に対して智香は目を潤ませ今にも泣きそうな表情を見せる。
「ち、違うのよ智香! 確かにあたし料理苦手だし、この機に料理を教えてもらえるなんてあたしってばラッキーよねー」
「そうですよ、朱鷺塚先輩。お料理の上手な相沢先輩に教えてもらえるなんてラッキーですよ」
半泣きの表情の智香を見て慌てる香織。
それに対して愛那は調理をしながらも能天気な笑顔を見せた。
「そんな事は分かってるけど……って、愛那っ!? あんた何を入れようとしてるのよ!?」
「……ほえ? これは唐辛子ですけど朱鷺塚先輩知らないんですか?」
「知ってるわよっ! それより、なんで肉じゃがを作ってるのにそんな大量の唐辛子が出てくるの。そんな量の唐辛子をぶち込まれた肉じゃがを食べたら火ぃ吹くわよっ!!」
「だって、愛那が作ったお料理だって分かるようにオリジナリティを出したいじゃないですかぁ」
呆れる香織の顔を見ながらやたらとニコニコ顔で答える愛那の背後に智香が近寄ると軽く頭をゲンコツした。
「そんなオリジナリティはいりません。愛那ちゃんはまず基本を忠実に守ってお料理しましょうね」
「そんなぁ、それって没個性になっちゃいますよ、相沢先輩ぃ」
泣きそうな顔で懇願する愛那。
「基本も出来ていない人がオリジナリティを語るのはい・け・ま・せんっ! それと、相沢先輩って呼ぶとお兄ちゃんと間違えそうだから呼び方を変えてもらえないかなぁ」
笑顔ながらも鬼気迫る迫力の智香に愛那は無言で何度も首を縦に振るのだった。
調理実習室で料理を始めた愛那、智香、香織の三人だったが、その様子は以外と静かだった。

「うーん……これって皮を剥いた後どうするんだっけ?」
香織が顔をしかめて皮を剥いた人参を睨みながら唸っている。
「香織ちゃん、その人参は適当な大きさに切ってね」
「あははっ、朱鷺塚先輩はホントに料理が苦手なんですねぇ」
悪戦苦闘する香織の横で愛那が笑う。
「味覚破綻者のあんたにそう言われるのって結構屈辱感があるわね……」
苦々しい表情で悪態をつく香織だったが、愛那の料理の手際自体は決して悪くないのでそれ以上の事は言えず自分の作業に集中し始めた。
「本当に不思議よね。愛那ちゃんって料理自体の手際は悪くないのに味付けだけは妙に個性的にしたがるのよね……」
「だって、そっちの方がインパクトあるじゃないですか」
「奇抜な味付けでインパクトを与えても良いイメージは残らないんじゃ……」
あくまでも我が道を通そうとする愛那に智香は深いため息を吐いた。
「ここまでくるとある意味立派よね。あたしには真似できないわ」
「真似されても困りますっ!! 香織ちゃんも変な感心してないでちゃんと料理してっ。それから、愛那ちゃんも指示された通りに味付けしなきゃダメだからねっ!」
智香の剣幕に驚いた香織と愛那は素直に言う事を聞き、智香の監視に近い指導のもと調理を再開した。


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