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中嶋幸司奮闘記
【コメディ 恋愛小説】

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中嶋幸司奮闘記-2

「ちょっと、何を騒いでるのよ香織。騒ぐなとは言わないけどもう少し声を抑えられないの?」
「……廊下にまで香織の声が聞こえてきたわよ。相沢の声もね」
藤崎と柊に嗜められた圭介と朱鷺塚は苦笑しながら平謝りをすると、その横で智香ちゃんがホッとした表情を見せたのだった。
「さて、俺はこの辺でお暇を……」
「待て。君には話があるのだ中嶋」
この場からそろりと逃げ出そうとする俺の肩を柊が掴む。
「いや、俺は話ないから。てか、そんな目で見つめないでほしいんだがなぁ。照れるじゃん」
引きつった笑顔で逃げようとする俺に対して柊は至って冷静なものだった。
「私は君に逃げられると困る。昨日の話の件が途中になっているしな。それに一時限目は自習だから安心したまえ」
いや、それはとても安心出来ないのですが……。
俺が困惑していると、俺の右腕を柊が拘束してきたのだ。
しかし、俺への拘束はそれだけでなく、同時に左腕を美弥ちゃんに掴まれてしまった。
柊はどうでもいいが、美弥ちゃんに腕を掴まれるのは正直嬉しいぞ。
そんな事を思っている俺を余所に両サイドにいる柊と美弥ちゃんが話をしていた。
「美弥、すまんな。君にまで手間を掛けさせてしまったな」
「気にしなくていいわよ。今回の件は私にも関わりがある事ですから」
二人は普通に話をしながら俺を柊の席に連行するのだった。

今回の一件……。

まあ、学園の行事には全く関係ない話なのだが、TVタレント『藤崎美弥』には大いに関係する話らしく、普段の俺なら無条件で飛び付き美弥ちゃんとお近付きなる為に頑張っただろう。
しかし、今の俺はサッカー部のキャプテンという肩書きがあるので、今までみたいな自由がきかない。
そして、最近自由がなれないもう一つの理由がある。
それは昼休みに現れるあいつ等の存在だ……。

「中嶋せんぱ〜い! お昼でっすよー!!」
「愛那っ! そんなにお弁当振ったら中身がグチャグチャになっちゃうよ」
「秋兎、うるさい! それより何で秋兎もお弁当二つ持ってるの?」
「中嶋キャプテンの分に決まってるじゃないか。愛那のお弁当って毎回失敗してるし……」

昼休み、俺達の教室にやってきて大騒ぎをしている一年の男女二人。
こいつ等は双子で男の方はサッカー部の部員でもある。
名前は男の方が『相模秋兎』
女の子の方が『相模愛那』である。
この二人、何故か知らんがやたらと俺に懐いてくるのだ。
可愛い女の子なら大歓迎の俺だが秋兎の場合、外見が愛那とそっくりなので質が悪い。
しかも、料理の腕も良いときてる。
反面、愛那の方は料理の腕は壊滅的だ。
愛那自身は料理をするのは好きらしいのだが、腕前は一向に上がらないらしい。
以前、愛那の弁当を食べて幽体離脱しかけた事は記憶に新しいだけに恐ろしいな。

もう、あんな目には遭いたくないんだけどねぇ……。

「中嶋せんぱい、今日もお弁当を作ってきましたよ。愛那ちゃん特製の愛情たっぷりランチで〜す」
満面の笑顔でランチボックスを差し出す愛那。
それを止めようとしたが、出来ずに狼狽える秋兎。
食べたら地獄行き確定の弁当を差し出されげんなりする俺。
そして、ここ暫く日常的に続いていたその光景を生暖かい目で見つめる若しくはニヤニヤしているクラスメイト達。


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