僕らの日々は。〜パンにまつわるエトセトラ〜-3
「あ。……そういや僕も毎回疑問だったことがあるんだけどさ」
「あら春風も?何?」
「アンパン男の顔に水がかかったり、顔を誰かに食べさせて減ったりしたらさ、新しい顔に交換するじゃん」
「それがどうかしたの?」
僕は長年の疑問を口にした。
「交換して飛んでいった前の頭はどうなるんだろう……?」
「あー、なるほど」
普通に考えればどこかに落ちるのだろうが、やっぱポイ捨てするんだろうか。
……森の中にアンパン男の顔がたくさん落ちてる光景ってなんか嫌だ。
「分かったわ春風!」
「うわっ!……何が?」
やおら一葉が声をあげる。ビビった。
「何がって、使用済みの顔の末路よ」
「なんか嫌だなその表現…」
「細かい事は気にしない。………知りたい?」
「……まぁ、一応」
自分で言い出した事だし。
一葉は自信満々である。……いつもの事だが。
「彼らの末路はアンパ〇マンの成れの果て、その名も……『残飯マン』よ」
「ざ……『残飯マン』って……。なんかヒドいネーミングだなそれ」
もはや子供向けのアニメのキャラクターじゃないと思う。
「残飯マンの使命はアンパ〇マン達のバックアップよ」
「バックアップ?」
「いい?考えてみなさいよ?そもそもパン男だけ種類がたくさんあるのがおかしいとのよ」
……話がよく見えない。
「……何の話さ?」
「だからさ、パン男にいっぱい仲間がいるなら、バイキン男にもたくさん仲間がいないと変じゃない?」
「例えば?」
んー…、としばらく考え、
「『大腸菌マン』とか『サルモネラ菌マン』とか?」
それこそ子供向けアニメのキャラクターに付ける名前じゃない。
「そういう菌男達がアニメに登場しないのは残飯マン達がやっつけてるからよ、きっと!」
……顔だけのアンパン男(残飯マンとも言う)がサルモネラ菌男と戦うシーンなんて、そりゃ子供向けのアニメでは流せないだろう。……なんか、絵的に。
でもサルモネラ菌ってどんな姿なんだろう…とかアホな事を考えている間に、移動パン屋の車がこちらに向かって来ていた。
「……ねぇ春風。ちょっと見てみない?」
「へ?…別にいいけど」
二人してパン屋の車へ向かう。車はちょうど道端に停車してパンを売っているところだった。
「いらっしゃいませー」
「あ、ほら見て春風!」
一葉が指差す先に。
「……あったよ」
アンパ〇マンの顔をデザインした菓子パンが売っていた。顔がチョコで描いてあるアレである。