「さゆ」-1
「雪だ・・・」
この街にも雪の降る季節が来た。手のかじかむ中、真っ白な息で手を温める川上沙羅(かわかみさら)は、学校帰りでバイトに向かっていた。
「さむいさむい〜」
空から降る雪を見ながら少し足早になる。
「あっ沙羅ちゃんじゃん!」
後ろから声がして振り向く。
「小林さんだっ!」
同じバイトの小林遊馬(こばやしゆうま)がこっちを見ながら手を振っている。
「さむいな〜」
「ほんとさむいですね〜」
2人はたわいもない話をしながらバイト先に向かう。
2人のバイト先はイタリアンレストランである。同じ高校生だが学校も学年も違う。つまり、バイトの先輩と後輩という事になる。2人は話もよくするため、バイト先ではわりと仲が良い。
今日もお店はにぎわい忙しい時間を過ごした。沙羅と遊馬は同じ時間にバイトをあがった。
「お疲れ様です!小林さん」
「おう。お疲れ!暗いから一緒に帰るか?」
「いいんですか?ぜひ一緒に帰ってください!」
2人で暗い夜道を歩く。空からはひらひらと雪が舞い降りていた。
「なぁ・・・」
「はい?」
「沙羅ちゃんさぁ、俺の彼女にならない?」
「・・・!?いきなりどうしたんですか?!」
沙羅は驚いて鞄を落としてしまった。
「とか言ったりしたら困るよな!」
遊馬は鞄を拾い上げ「はい」と沙羅に渡すと歩き始めた。少し沙羅と遊馬に距離が出来た。
「小林さん!!!」
沙羅は遊馬との少しの間を走り遊馬に後ろから抱き着いた。
「沙羅ちゃん?!」
「小林さんっ!あたし小林さんの彼女になりたいです!バイト始めて仲良くなって少し気になっててでも・・・小林さんはあたしなんか見てくれないと思ってました・・・あっ!すいません!」
沙羅の顔が真っ赤になり、自分が言った事に焦り遊馬からすぐ離れた。
「な−んで離れんの?それって俺と同じ気持ち?」
返事を聞く前に遊馬は沙羅を大きな体で包み込んだ。それからどのくらい時間が経ったノだろう・・・。
「お前あったけぇなぁ・・・でもこのままだとお前風邪ひくからな。時間あるならうちくる?」
「はいっ!」
遊馬は笑いながら沙羅の手をひき家に向かった。
部屋に入り、あったかいココアを飲みながら遊馬が話し出した。
「俺ね・・・お前の事好きなの。さっき適当に彼女にならない?とか言ったけどそれは本気。でも沙羅ちゃんも俺と同じ気持ちって思っていいの?」
「・・・はい・・・あたし小林さんが好きです・・・・わっ」
遊馬が沙羅を抱きしめた。顔をあげると目があった。見つめ合ってだんだん顔が近付いて行く。「ちゅっ」唇が触れるだけのキス。何回も触れるだけのキス。遊馬が先に唇を割った。クチュ・・・クチュ・・・
「んっ・・クチュ・・んんっ」
深いキスをした。沙羅の大きな瞳が潤んでいた。ふんわりとパーマのかかった栗色の長い髪を撫で、またキスをする。遊馬の手が沙羅の胸を服の上から触る。