ソドム-5
「ひぁっ!」
いきなりの事に声を挙げる真緒。むず痒いような感触が広がる。
「次はヒザだな」
そう言って武は真緒のヒザを立てると、赤く染まった左ヒザに武の唇が吸いつき、舌が這った。
じゅ、じゅる…ちゅる…
音が響く。
今度は声を挙げない真緒。代わりに吐息が混じる。
「…ふぅ…うっ……」
舌に鉄臭い味を感じながら、武は舐めた。太ももに添えた掌が汗ばんでいく。
唇と舌の感触や音に刺激を受けたためか、真緒の心にも妙な気持ちが芽生え始めた。
〈もっと舐めて欲しい〉と。
(ああ……武兄ちゃん…)
想いは興奮を呼び、次第に下腹部が熱くなる真緒。
だが、武はそんな想いを無視するように、ヒザの血を舐め取ると立ち上がり、
「…こ、これで大丈夫だろう」
と言って、座っていた場所に戻ってしまった。
(えっ……?)
真緒は何かを求めるように武を見つめた。
だが、武は真横を向いたまま真緒の方を見ようともしない。
(なんで……)
知らぬ顔をする武。
真緒の身体に舌を這わせながら、抑え切れなくなる自分が怖くなったのだ。
しばらくの沈黙。
雨音は静まる事無く続いていた。雨風は山に冷気を呼び込む。
「お兄ちゃん。寒い……」
真緒が先に口を開いた。
しかし、その言葉に武は困った顔をして、
「寒いっつっても……もう着るモノないし……」
「良い考えがあるの。こっちに来て」
「来てって……」
武が傍に寄っていくと、真緒は着ていたジャンパーを脱いだ。
「これ着てさ、私も入れてよ。そうしたら2人とも暖かいでしょ」
「良いアイデアだな」
武は受け取ったジャンパーを肩から掛けると、壁を背に座った。そして、真緒を引き寄せると背中から抱くようなカタチでジャンパーにくるんだ。
顔が近い。サラサラの髪に首元の白い肌。さっきは気づかなかった真緒の匂いに、武の鼓動は高まる。