ソドム-4
「でも、それじゃ武兄ちゃんが……」
「オレは山の生活に慣れてるから平気さ。さ、着替えろ」
真緒はしばらく迷っていたが、武のジャンパーを受け取ると、〈見ないでよ〉と念を押して後を向いた。
「分かってる」
武も壁に顔を向けて瞼を閉じる。
真緒がパーカーをたくし上げる。
「…ん…うん……」
力を入れた時、息が漏れるような声がなまめかしく聞こえてしまう。
武は瞼を開き、そっと真緒を見た。そこにはパーカーを首元までたくし上げた姿が目に飛び込んできた。
白い背中。下に着ているスポーツブラが、パーカーと一緒にズレて乳房の縁が見える。
「ふうっ……」
パーカーを脱いだ。武は素早く顔を壁に向けた。
真緒も見られてはしまいかと、武の方を見る。
(よかった。見てない……)
ホッとした真緒は武のジャンパーに袖を通した。
武の匂いがする。
だが、瞼を閉じた武はあらぬ思いに戸惑っていた。
小さな頃から妹のように可愛がってきた真緒に、異性を感じている自分に。
「もういいよ」
真緒の言葉に武が向き直った。彼のジャンパーを着て座っている。
「さすがにおっきいや。手が出ないもん」
そう言って真緒は腕を上げて見せる。袖口がかなり余っていた。
「とりあえず雨が止むまで辛抱しろ」
武は立ち上げると真緒のパーカーを広げ、鴨居の釘に掛ける。そして、真緒のそばに座ろうとした時、ヒザから血が滲んでいるのを見つめて、
「オマエ、ヒザは大丈夫か?」
そう言って真緒の足元に跪く。
「足首もだけど、さっきからジンジン痛いの」
「ちょっと靴を脱がすぞ」
武は、怪我した方の靴をゆっくりと脱がしていく。少し痛むのか、真緒の眉間にシワが寄る。
踝からも傷により血が滲んでいた。
武は真緒のふくらはぎに手を添えると顔に近づけた。
「お兄ちゃん…?」
武の行動に戸惑う真緒。
白く、しなやかな脚に掌に伝わるしっとりとした感触。
「止血には唾もいいんだ」
武はこみ上げる思いを抑えきれず、真緒の血に滲んだ踝に舌を這わせた。