ソドム-2
「さ、帰ろう。歩けるか?」
手を差し出す武。
「大丈夫だよ。転んだだけだから」
そう言って身を起こそうとした時、真緒が足首を押さえた。
「ツゥッ!痛」
「お、おいっ!」
心配気な顔で覗く武。どうやら滑った時に、足首をひねったようだ。
武の肩を借りて、なんとか河原から上がったが、
「だんだん痛くなってきた……」
真緒はそう言うと、道ばたに座り込んでしまった。
「痛くて立てない」
「立てないって、親父達は山に行ってるし……」
困った口調で言う武。真緒は俯いなまま足首を押さえている。
「仕方ない」
武はしばらく考えた末、真緒の前にしゃがみ込むと、
「オレがおぶってやる」
「エッ?」
武の言葉を聞いて、真緒は驚きの表情を露にした。
ここから武の自宅まで、ゆうに1キロは登り坂が続くのだ。
そう思って躊躇する真緒に、武は優しい口調で、
「大丈夫だよ。ホラッ」
その言葉に少し安心したのか、〈じゃあ〉と言って武の肩に腕を回した。
「しっかり掴まってろよ」
武はそう言うと真緒の脚に手を回して起き上がる。
一瞬、ヨロける。
真緒の腕に力が入る。武も回していた掌が真緒のももを掴んでいた。
首筋に当たる真緒の頬。背中に感じるふくよかな胸。掌の柔らかな感触。
事故とはいえ、初めて触れた真緒の身体に武は戸惑っていた。
「ごめん……重いでしょ」
真緒の一言で我に返った武は、
「大丈夫だよ」
そう言って真緒を抱え直すと、心配を打消すように確かな足取りで進みだした。