年上の事情。‐8-4
ソレイジョウノカンジョウハ、ナイ――
ナイ――
胸にずしんと響く。
玄関にはあたしと立花くん。
「ごめん‥今日は疲れてるから」
そう言うだけで精一杯だった。
今気付いてよかった。
あたしは彼の先輩。
彼はあたしの後輩。
仕事仲間。
それ以上でも、それ以下でもない。
今、気付いてよかったんだ。ハマる前に。
年上で、自分よりもしっかりしていて、包容力があって、
あたしはそういう人を求めている。
甘えられたいんじゃない。
あたしは誰かに寄り掛かりたい。
甘えたい。
だから、
年下じゃダメなんだ。
落ち着きたい。
ホッとできる空間が、ほしい。
ホッとできる空間――
鳴海くんはあたしと過ごす時間、どう感じていたのだろう――。