年上の事情。‐7-3
1階まで下りるエレベーターのなか、携帯を開く。
人を好きになるってどういう感じだったけな。
新しい恋愛の始め方がわからなかった。
自分の気持ちの変化にはなんとなく、気付いていた。
もう、今日は何度目だろうか。携帯の画面に映るのは昨晩受信した、鳴海淳悟からのメール。
どこか信じたくない気持ちもあった。
自分の気持ちを確かめたくて、
あたしは立花くんへの返事を先送りにした。
もう少し流されてみようと思った。
「そっかぁ‥」
日課になってきている気がする。部屋には香ちゃんが来ていた。
「きっと、立花くんはわかってたんでしょうね。
先輩からの返事が‥
それでもつなぎ止めたかったのか。
あーぁ、あたし何もしないうちに、めちゃめちゃ振られてるし!」
香ちゃんは抱え込んでいた膝に顔をうめた。
「モテモテでごめんね」
「ほんとですよ〜」
香ちゃんは笑ってくれる。
それが胸が痛かった。
鳴海くんへの気持ちはまだ話せない。
言葉にしたら実感してしまいそうで恐かった。
そしてまだ恋愛にのめり込むワケにはいかなかった。
あたしにはやらなければいけないことがある。
今の仕事を成功させなきゃ‥
「おはようございます」
次の日、立花くんはいつものように挨拶をした。
何事もなかったかのように、日は過ぎていき、
あたしは出張へと出発した。