年上の事情。‐7-2
どれくらいたっただろうか――
部長の怒鳴り声に我に返り、内装のデザインを考え自分の世界に入り込んでいたのに気付く。
「ばかやろうっ!!」
え?何があったんだ?
部長のデスクの前には立花くんが立っていた。
「‥なにがあったの?」
あたしは隣にいる香ちゃんに小声で尋ねる。
「‥今日提出の資料、家に忘れたみたいです」
「あれだけ仕事はウチにもち帰るなと言ったろ!
‥もう一度作り直せ、今日中に」
「はい‥すみませんでした」
立花くんは部長に頭を下げ自分の机にもどり作業を始めた。
部長が怒ったのを久しぶりに見た気がする。
昔はしょっちゅう怒られてたよな〜あたし。
頑張れ、これも成長だ。
いつもとは違う空気が広告部内に張り詰めていた。
「よし!今日はここまで」
そう自分に言い聞かせ、仕事を終わらせたときには部屋にはあたしと立花くんの2人だけになっていた。
「どう?終わりそう?」
「はい‥もう終わります」
立花くんの返事を聞きながら、あたしはあることを思い出した。
あ‥
いっか‥
今日のところはやめておこう。
あたしにだっていくら答えが出てるからって相手の状況を気遣うことくらいできる。
また明日にでも昨日の返事をしよう。
「頑張ってね、じゃお先」
そう言ってあたしが帰ろうとしたときだった。
「あっ、あの!」
立花くんが立ち上がった。
「昨日のことなんですけど‥ちょっと待ってもらっていいですか?」
え?
「なんかオレ、全然ダメで‥仕事も出来なくて、怒られてばっかで‥
でも、五十嵐さんはすごくて、オレなんかまだまだで‥えっと‥」
立花くんは真っ赤になりながら一生懸命言いたいことを振り絞っているようだった。
何かを伝えたいことはわかった。
そうだな‥
「オレ頑張るんで、これからもっと頑張るんで、だから、見ててもらえませんか?」