結界対者・終章-21
「柊っ! なに、これ! 大丈夫!」
「……痛っ、ああ、さっきのに比べればな。それより間宮、拐われておいて、助けに来た俺に『なにこれ』はねーぞ」
「拐われた? 私…… そうだ、私! 気が付いたら此処に居て、帰ろうとしたらこいつに何かされて……」
間宮の表情が、みるみる怒りに満ちていく。その前で
「馬鹿な! 私が術を解かない限り、目覚める事は無い筈なのに!」
目を覚ました間宮に、ブルゲが俺が現れた時以上の動揺を見せる。
「煩いわね、おまえ!私に何をした? 何の為に私を此処に連れて来たの!」
「煩いのはお前だ、小娘! だから赤い目の力の全てを晒け出せとさっきから言っているっ!」
「そんなの、知らない! 私は刻の鐘の対者、そして赤い瞳は優れた対者の証……」
言いかけたその時、突然間宮の動きが止まった。俺は何が起きたのか解らず、ただ呆然と……
「……ねえ柊、迥霍(ぎょうかく)の生まれ変わりって何?」
え?
「……解る、柊の心の中、私の本当の力」
や、やめろ!
「間宮! これは違う、違うんだ! 俺の心を読むな、今は読むな!」
瞳孔を開き、異常なまでに震え出した間宮に、俺は夢中で叫ぶ。
まさか、力が……
しかしそれを、ブルゲの高笑いが遮った。
「あはははははっ! そうか、そういう事か! そいつは盲点だった! なるほどな、本人が知らない迥霍(ぎょうかく)の力、その理由は、知っていては駄目だったという事か!」
ブルゲが勝ち誇った様に、まるで雄叫びを上げる様に言い放つ。
間宮は更に震え、俺はただ立ち尽くす。
「私が告げよう、間宮セリ! 思い出せ、己の全ての力を! 己の内に眠る迥霍(ぎょうかく)の力を!」
その瞬間、目を見開き震えていた間宮の体が、突然白い光を放ち始めた。そしてそれは、間宮の体を包む様に広がり始め、この部屋全体を満たす様に広がっていく。
「あはははっ! 待っていた、この時を待っていたああああっ! この力を得る為に、私は実体を棄て去り、今日まで過ごして来たのだ! さあ、力を! 私に力を!」
光に包まれた間宮に、ブルゲがよろめきながら歩み寄る。
「ブルゲ…… てめえ!」
「さあ、力を! 私なら、全てを受け入れ…… ら……」
言いかけた途中で、光が更に烈しさを増し、その中にブルゲの姿を溶かす様に飲み込んでいく。
「間宮…… 間宮ああああああっ! しっかりしろ、間宮ああっ!」
叫びながら、夢中で駆け寄る。ブルゲが飲み込まれた光に、俺も飛込む。
助けなくちゃ、間宮を! だが、どうすればいい……