結界対者・終章-20
「き…… 貴様! 落ちた筈だっ!」
「へへっ、ビンゴ! ってね」
立ち尽くす、ブルゲの向こうに、眠ったままの間宮の姿が見える。
「おい、髭野郎! さっき、テメェは、俺になんざ用は無ぇって言いやがったよな?」
「……それが、どうしたね?」
「どっこい、こっちには用があるんだよ。さあ、間宮を返してもらおうか!」
「ははっ、こちらが頷く訳が無かろう?」
「なら、頷かせてやるよ!」
拳を固め、風を集め、目の前の敵に狙いを定める。
「ほう、力づくという訳か、野蛮だな」
「何とでも言えよ、クズ野郎」
突きだし、風を放つ!
風の刄が、全力の疾風が、部屋中の全てを、机を、椅子を、スタンドを巻き込み、ブルゲに向かって迫る!
やった…… か?
しかし、ブルゲは…… それらの直撃を、全て受けた筈のブルゲは、何食わぬ顔でその場に立ち
「ふふ、効かんね」
ニヤリと微笑みながら呟いた。
「なんだと? ……直撃の筈だ」
「フフ…… 私達はね、君らの概念を遥かに超越した存在なのだよ。大体、実体の無いものに、物理的な攻撃は無意味だ、そう思わないかね?」
「実体が無い…… だと?」
こいつ、樋山と同じ……
「では、次は此方の番だ」
言われた刹那、俺はフワリと宙に浮き、その瞬間、そのまま床へと無理矢理落とされた。
「ぐあっ!」
落とされた、なんてもんじゃない、叩きつけられた感じだ。全身が悲鳴を上げる様にミシミシと軋み、苦しくて立ち上がる事が出来ない。
「ほう、君は知ってるいるね、間宮セリの力を解放する方法を」
「……な」
「目を見れば解るさ。だが、それが何なのかまでは、残念ながら読み取る事が出来ない」
「……!」
「さあ、教えてくれ。そうすれば、二回目は勘弁してあげよう」
「ふざけ…… るな…… 誰がテメェなんざに」
「ほう? あくまでも歯向かう、か?」
再び体が宙に浮かぶ。どうする事も出来ず、俺は歯を食いしばる。
畜生…… ここまできて……
その時だった。
立ちはだかるブルゲの向こう側から、声が…… 部屋全体に一番聞きたかった、あの声が……
「柊! 柊なの?」
響き渡り、そのまま俺は、床へと放り捨てられる様に落とされた。