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結界対者
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結界対者・終章-10

「だが、私の年齢と、その理由を先に理解して貰わないと、これから私が行う様々な事を目の前にした時、貴様は一層混乱する事になるぞ」
「……いくつ、なんですか?」

 問いかけると、彼女は片掌を広げながら差出し、得意気に

「これだ!」

と、言い放った。

「五…… 才…… ?」
「馬鹿者! 五百だ、五百!」
「え…… 」
「五百歳だ!」

 もう、何が何だか解らない。

「まあ聞けよ、簡単に説明してやるから」

 勝手にしてくれ。

「あの糞ボウズな、他の奴には結界を守る力を与えたのに、私には結界そのものを与えおった。貴様も存じておろうが、結界とは強大な霊力により為されていて、そんな物を生身の人間が内に宿せば、何かしらおかしな事が起こる」
「はあ……」
「つまり、それで私は、五百年間このままって事だ。解ったか?」

 解るわけないだろうが!

「ふん、まあ良い。サオリ、奥の間に移動する。都築がそこで、支度を進めておるからな」




 アヤネに導かれて、辿りついた奥の間と呼ばれる部屋は、学校の教室程の広さで、正面に大きな掛け軸が釣り下げられていた。そして部屋の中程には、いくつかの大きな硝子の、水が満たされた壺の様な物がいくつか置いてある。

「ほれ、もたもたするでない。さっさと此方に来い、小僧!」

 「それ」の次は「小僧」ときたもんだ。

「ふふっ、アヤネ様、あんなに嬉しそうに」

 顔をしかめっぱなしの俺の横で、サオリさんが小さく笑う。

「嬉しい? ですか?」
「ええ。あの方はね、ああいう風に振る舞ってはいるけれど、大変な苦労をされているのよ。何しろ、この屋敷から出られないでしょ。仮に出たとして、すぐに同じ様な条件の環境を用意して自らを保護する予備結界を張らないと、大変な事になる」
「はあ……」
「だから、屋敷に誰かが来ると、いつもあんな感じなのよ」

 屋敷から出られない、のか……
 道理で今まで、お目にかかれなかった訳だ。


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