FULL MOON act3-8
あれは彼なりの優しさだったのかもしれない。私を愛していながら違う人を強く求めてしまう。そんな感情、私にぶつけてしまったら、あの時の私は壊れていた。
時間のたって落ち着いたはずの今の私もショックや色々な感情がないまぜになり言葉を発せていない。
「それで…苦しくて…別れようっていったんだ。めぐはすごく泣いて…本当にこれでいいのかって何回も思ったよ。俺は本当はめぐを愛しているんじゃないかって。…だから、昨日まではやり直せるなら、やり直そうと思ってた…。」
目の端に涙が滲んでくる。私は、彼を求めながら、彼の感情の揺れを一つも分かっていなかった。私は私の悲しみに溺れ、そのなかでしか彼を見ていなかった。
それはひどく浅はかな過ち。ぽとり、と一筋涙が手の甲に落ちるのを感じた。
彼はキッとうつむいていた顔をあげ私を見る。もう悲しそうな表情はしていない。何かを決心したようだ。思わず私も身構える。
「…実は、さっき気になってた人に気持ちを伝えた。」
…だから遅れたのか。
それでも私は何も言葉を出せない。何をいっていいのか分からない。視線で、それで?と問う。頭が後悔で埋もれていくけど、必死で耐える。
私が欲しくてたまらなかった人の心は、もう既に誰かのものだったんだね………
院へ進むためっていうのも私への配慮かな…
泣くのは後でできる。我慢しなきゃ。
「彼女は正直に言ってくれたよ。だから俺も正直に言おうと思って。このままじゃ俺も、めぐの友情にもヒビがはいるから。」
――友情?
「…友…情?」
どうゆうこと?
うん、と彼は頷いた。
「白井なんだ。俺の好きなやつ。」
「…夏樹?」
さっきまで、会っていた…応援してくれてた…。
私を、頑張ってって。
夏樹は、今までどんな気持ちで私を応援していたの…?
「な、なんていったの。夏樹、なんていったの。」
戸惑ってしまう。必死で押さえた動揺がすぐに顔をだす。