FULL MOON act3-6
私は予定より30分も早くついてしまったカフェでコーヒーを飲みながらかつて二人で眺めた景色を見た。
そんな景色を見たものだから、過去の出来事が思い出されても仕方ないのだが、窮屈な思いでいっぱいになる。
やめておけばよかった。緊張する。どれくらいだろう。あえなかったのは事実、一週間くらいだけど、別れたいって言われてから…二週間くらいたってるか、な。
『西野くんのこと好き。』
その日は一斉一代の決心をして言葉をしぼりだした。今しかいうチャンスがないということも気付いていた。
友人・夏樹の配慮もあり、このところ二人で遊ぶ機会が増えていたのだ。二人で遊ぶということは、きっと期待していい、ということだろう。
『…そっか。何となく、分かってたかもしれない。』
思いがけない彼の答えに戸惑う。
『あ…そ、そうだよね。私分かりやすいかも…』
やっぱダメかなぁ…。彼は、とても優しくて面白い。、でも時々私を見ていない時があるのだ。いや、私が勝手にそう感じているのかもしれない。
その居酒屋は非常に騒がしいのだか二人のまわりはまるで時が止まったように静か。
彼は何か考えていたが、私の顔をフッと見て言った。
『俺も安西のこと好きかもしれない…。』
半ば諦めかけていた顔をパッとあげる。
『………ホント!?』
『うん。まだお互いのことよく知らないけれど、これから知っていけばもっと好きになれると思う。』
あ、ありがとう!思わず、大きな声をだしてしまった。店の何人かが私を見る。す、すいません…。
私は歓喜した。
そうだ。私は歓喜したのだ。
『でも俺、安西が告白してくるって思わなかったな。』
告白のち、私たちは手を繋いで歩いた。
『なんで?』
『イメージ。』
どんなイメージだ。
『…ホントは言うつもりなかったんだけど、友達が絶対言えって。西野くんは、私のこと好きなように見える…って応援してくれたの。』
『白井?』
『そう!よくわかったねー。夏樹ホントに頼りなるんだー』
喜々として話す私に彼はクスリと笑った。
『お前らホント仲いいもん。』
そういうと私に優しくキスをおとした。私にとって初めてといっていいそのキスは後々まで、ずっと心に残っていた。