FULL MOON act3-5
付き合う前はすごく優しかった。付き合っても優しかった。お互い、合わない所も感じていた。けれど好きなら補えると思ってた。
可愛い恋愛をしてたな…。今考えるとそう思う。だって、そうじゃない。私、泣き付いて、行かないでって言った。好きだから、嫌な所もなおすよって言った。何回も。
好きだったのかな?あの気持ちは。でもいとおしかった。ずっとそばにいて欲しかった。彼は、
『大学院に進むんだ。』
そう言って、私に別れを告げたのだ。
私が、『サポートするし、邪魔な時はハッキリ言ってもいいから、付き合っていたいよ。』
と言ったのに。
悲しい、目で、
『欲張りだよ、めぐは』
そう言われた。
私たちそこで終わったのだ。待ってる…。私が最後に留守番電話に残した言葉を聞いていないはずがない。
彼は来なかった。
会いたい、なんて、ケイタの方がずるい…。
欲張りだよ。
悲しい。
胸の奥からよく分からないツンとした感情がにじみ出して、涙腺を刺激する。
泣きそう。
そうして、それはやはり恋心だったことに気付く。
「…どうすればいいと思う?」
「あんちゃんの気持ち次第だけど…好きなのはどっちなの?にっしーは本当にあんちゃんのこと好きなのかな?」
そうなのだ。きっと彼は今寂しいだけなのかもしれない。だから、私を利用しているのかも…
でも、本当に私を求めていたら?
後悔していたら?
本当に好きだったら?
曖昧に揺れる。でも、両方失うのはイヤな私の狡猾さ。
「私、言ってみる。彼氏が出来たって。私のこと好きだったら、取り戻そうとするはずでしょ」
夏樹はニコリ、とどこか寂しそうに笑った。
「そうだね。頑張って!」
夏樹は、いつも私を応援してくれる。そんな彼女にたいしていつも悪く思う。私も恋愛の相談にのりたい、といつも好きな人はいないか尋ねるが、今、いなくてさーとカラカラと彼女は笑う。
かっこよくて頼れる私の友達。
ブブブ
ポケットの中のケータイが揺れた。返事がきた。
『今日時間ある?』
『大丈夫。いつものカフェに5時は?』
『いいよ。』
そのメールの簡潔なやり取りが少し寂しく感じた。
仕方ない。私は、この気持ちを見極めなくてはならない…。
起きてる?めぐ。
何?…あ、だめだって。もう朝なんだから、1限遅れちゃうよ?
まだ平気だよ。それより…さ。
元気だね。
めぐとしたいからこうなってるんだよ。
フフ。ホント?…ん。
私はずるりと過去の情事を思い出す。仕方ない。彼は私のいわゆる『初めての人』だったのだ。