FULL MOON act3-12
「高坂さん…私のこと好きですか?」
「……会ってから、言うよ。」
ダメだ。すぐ聞きたい。
私は電話を切り、彼に近づく。
「…高坂さん。」
「あ…」
安西さん…と彼は小さくいう。
「言ってください…」
彼はうつむいて、呟く。恥ずかしそうだ。なぜだろう。昨日はあんなにも激しく私を求めてきたのに。
「…好き、というか…なんか…そうじゃなくて」
…?
一瞬、夏樹の言葉がよぎる。
――遊ばれてない?
やっぱり、私って、ダメなのかな…。
「…愛してるって言った方が適切だと思う。」
うつむいていた顔を赤に染めながら彼は私を見つめた。
くらり、と頭が熱で揺れる。この気持ちはなかった。啓太の時にはなかった。…啓太は違う人を想っていたから。
愛。
私は意識せず、頬をポロリと濡らした。想いあうとは、きっとこういうことなのだ。
「これからなにがあるかわからないけど、君だけは大事にしたいんだ。よろしく…。」
「はい…。」
高坂さんは私の頬にキスをする。なぐさめるようなキスだ。涙をなめるようだ。
何て愛しいのだろうか。お互いを求めあえる幸せ………
なんだかほんの数日なのに私の体内環境は全て変わってしまったようだ。
涙がとまらない。
私は高坂さんになぐさめてもらいながら、涙が後から後から流れ出るのをとめられずにいた…。