Authorization Lover-VOLUME7--5
次の日、目覚めたら隣に銀の姿はなかった。
そして、テーブルに置き手紙があった。
そこにはさよなら、の一言のみ。
雛菊は銀が自分から去ったのを理解した。
山本のおじが帰ってきてから泣きながら手紙を見せたが、彼は既に承知していたようだった。
「ちょっと早まったが前から言っておったんじゃよ…仕方ない事じゃったんだ…。」
山本のおじは目を細めて、手紙を見ながら言った。
まるで自分に言い聞かせるように。
銀と出会って孤独からの解放が、これほど素晴らしい事だとは思わなかった。
そして同時に、銀が唐突に短い手紙を残したまま部屋から姿を消したときには、人の魂がこれほど脆いものだと、初めて知らされた。
どうして銀が急にそんな気になってしまったのか当時の雛菊にはどうしても理解できなかった。
だから、山本のおじが止めるのも聞かず、銀を追って榊商事に入社した。
銀にはすぐに会えた。
雛菊は入社当日、銀の部署を訪れたのだ。銀は初めは驚いていたが、すぐに破顔して雛菊を抱き締めてくれた。
久しぶりの銀の腕の中は心地好かった。
会ったその日に銀と寝た。どちらが誘ったかは覚えていない。
情事の後、銀が「付き合おか」と雛菊をギュッと抱き締めて囁いた。雛菊はもちろん承諾した。幸せすぎてクラクラしていた。
実際雛菊は浮かれていたのだ。
何故銀が自分の元から去ったのか。何故今まで姿を見せなかったのか。何故銀が年齢に削ぐわぬ地位にいるのか。
疑問点はたくさんあったのだ。盲目になっていた。
後であんな事になるとは知らずに…
第八話に続く