故蝶の夢〜幼き日の出会い〜-1
西崎さんと“お別れ”した後、私たちは数人の扉を開けた。
いずれも多輝が生前仲良くしていた人たちばかりで、お互い言い残した言葉を言った後、扉は消えていってしまった。
少し、疑問に思ったことがある。
「ねぇ、なんで私は扉の外側に来ちゃったのかな?」
次の扉を開けようとしている多輝の、制服の袖を引っ張った。
「は・・・?」
多輝は予想外の質問だったのか、目をまん丸にした。けれど、すぐにからかうような顔になる。
「お前方向音痴だから、道にでも迷ったんだろ?」
にっと歯をだして笑う。
「何よそれ・・・」
ほんとに、こいつは。
でもちょっと安心した。
多輝が私の心の中に入ってくるなんて、考えるだけでも恐ろしいもの。
扉を開けたら多輝だらけだったりしてね・・・
その想像に私は本気で青ざめた。
「おい、何してんだよー?置いてくぞ」
多輝はすでに扉を開けていた。私は急いで後をついて行く。
扉を抜けるとそこは・・・
見渡す限りの草原。
「なにこれ・・・誰もいないじゃない」
「あー・・・ほんとだな。草だらけ。」
足元に、何かがコツンと当たった。
私は首を捻って、それを持ち上げる。
(これ・・・硬くて白くて・・・)
「ひぃ!!?」
私は驚きの余りどこから出たのかわからないような声を出した。
その持っていた“モノ”を放り投げて尻餅をつく。
「なんだよ、どうしたー?」
「ほっ、ほっ、ほ・・・骨!骨落ちてる!!」
私はこの一瞬に、普段からは考えられない程の想像力を発揮させた。
ここから出られなくなって、二人で骨になってしまう想像。
多輝は驚きもせず、その白いブツを手に取った。
肝が据わっているのか、単なる馬鹿なのか・・・
「あぁ、骨だな。お前びっくりしすぎじゃない?」
(あんた、・・・びっくりしなさすぎじゃない?)
「お前だってコレ、見たことあるだろ?」
多輝はぷらぷら振ってそれを私に見せた。
目を細める様にして見る。
(そう言われてみれば、これは・・・)
キャンキャン!
鳴き声とともにそいつは草陰から飛びだしてきた。
尻尾を振りながら、前足を上げて多輝を見上げている。
骨をくれ、とねだっている犬。
「よっ、元気してたか?ロジー。」
ロジーと呼ばれたポメラニアンは嬉しそうに目を輝かせ、舌を出してはっはっ、と荒い息を吐いている。
「びっくりして・・・損しちゃったじゃない。」
私は頬を膨らませた。