ベルガルド〜闇の薔薇と解放〜-7
「お前の言う通りなら、俺がお前を殺さなきゃいけねぇんだろうな。」
下級魔族の男は一言の言葉を発する余裕もなく、ベルガルドが放った灼熱の炎に焼き尽くされた。最後の顔は恐怖だったか困惑だったか・・・
今になっては知る由もない。
「ヒト狩り・・・か。」
ベルガルドは遠くを見るように目を細めた。
そして再び魔力を封じると、馬車を運転しているであろうカイの元へ向かった。
「良かったな、お前も無事で。」
手綱を持つカイの傍には仲間であろう下級魔族の成れの果てが転がっている。
「心配なんてしてなかったくせに良く言うよ。一応適当な所に埋めてあげようと思ってさ、同族だし・・・」
「甘い奴だな。お前は・・・」
ベルガルドは赤い瞳を伏せた。
「それよりベル、もう一匹はどうしたのさ」
「あ?」
「全部で3人いたじゃん!」
ベルガルドはその体勢のまま凍りついた。
「おい!無事か!!?」
ベルガルドは馬車の扉を開けると、雪崩のように転がりこんでいった。
「え?」
しかし、中にはトゥーラとセシルが座っているだけだ。
ベルガルドはしばらく沈黙した。
「どしたの?ベルちゃんそんなに焦っちゃって!」
セシルはぷぷっと含み笑いをした。
「ここに、一人来なかったか?」
トゥーラとセシルは互いに顔を見合わせた。
「来たけど?」
「そいつはどうした!!?」
「倒した」
「は?」
セシルが腕を曲げて力こぶを作るような動作をする。
「トゥーラ様に魔族の位置を聞いて、あいつが馬車の扉を開けた瞬間ぶっ飛ばした!」
「・・・・。」
ベルガルドは自分が焦って醜態をさらしたことをひどく後悔した。
「なら、いい。」
なんとなくその場にいるのが気まずくなったのか、また馬車の外にでると、カイの隣(死体の無い方)に座ってため息をついた。
「ベル、中入ってていいよ〜。着いたら教えるし。」
「いや、馬車・・・むしろ俺がやろうか?」
「・・・ベル気持ちわるっ!普段絶対そんなこと言わないくせに」
やがて夜が明け、なおも馬車は進んでいく、アーレン国に隣接した地、スベニ国に向けて・・・