ベルガルド〜闇の薔薇と解放〜-4
「私共も、女王陛下の心配はしておりません。あなたの判断を人柄を・・・私たちは信じているのですから」
(メアリーに不安を見透かされたみたいね。)
トゥーラはメアリーに向かって微笑んだ。
「うん・・・そうね、私も信じるわ。きっと事件の真相を突き止められるって!」
「はい、それでこそ女王陛下です。胸を張って、行ってらっしゃいませ。」
セシルの騒動の30分後に馬車は出発した。副団長の話だと、スベニに着くのは翌日になるらしい。
馬車を操縦するのは、大国であるアーレン国の中でも指折りの騎手だと、セシルが説明していた。
中にはベルガルド、カイ、トゥーラ、セシルの4人が乗っている。
カイとセシルは、レオーベンの名物やアーレンの文化など、両国に関する話題で盛り上がっており、ベルガルドは眼を閉じて、起きているのか眠っているのかという感じだ。
トゥーラは頬杖をついて外の景色を眺めながら、何か考えごとをしているように見える。
「あ、そうだ。トゥーラさん、なんで僕たちが魔族だってこと分かったの?」
カイが思い出したように尋ねる。
「え?あぁ・・・私にも分からないのよ。ただ、なんとなく・・・ね。」
「なんとなく?僕たちがそんな直感で見破られるなんてね」
「えへへ、トゥーラ女王はほんとにすごい方なんだから!」
セシルは嬉しそうにはしゃいでいる。
この光景を見て、まさか魔族とヒトの王族一行だとは誰も思わないだろう。
だが、皆何かしらかの苦難を経て、ここにいる。
「おい、トゥーラ。」
ベルガルドはいつの間にか眼を開き、トゥーラを見ている。
いきなり名前をよばれたことに戸惑いながら、トゥーラは顔を上げた。
「その腕輪・・・どうした?」
指差す先には、トゥーラの腕にぴったりと密着している古びた腕輪がある。そこにはアンティーク調の独特の文様が刻まれており、鈍い輝きを放っていた。
「えぇ、この腕輪壊そうとしてもとれなくて・・・ずっと小さい頃からしている物なの。」
ベルは鋭い目でその腕輪を見た。
「お前呪われてるぞ。」
全員が驚き一斉にベルガルドの方を見た。
「ベル何言ってんの?ベルが言ったら冗談っぽく聞こえないから!!」
カイはトゥーラを気遣いながら、ベルガルドをたしなめようとする。
先程のDR中毒の一件のせいか、セシルは青ざめたまま硬直してしまった。
「冗談なんかじゃねぇよ、その腕輪から魔力を感じる。俺にはなんの魔術か判断できねぇけどな。お前の方が得意だろ?」
カイは突然のことに慌てながら、ちょっと失礼、と言ってトゥーラの手を取り、腕輪に意識を集中した。
眼を閉じて、見えない何かを探るように。
「確かに、魔術だね。」
トゥーラは内心の不安を押し隠して、続きを話すように促す。