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ベルガルド
【ファンタジー その他小説】

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ベルガルド〜アーレン城内侵入〜-2

「次の方どうぞ」

ベルガルドが馬から降りて前に進み出る。役人は、顔をしかめてベルガルドを見た。それも仕方の無いことで、赤髪赤眼の風貌に真っ黒なレザーのコートを着る子供など滅多にいない。
(最近の子供はずいぶん個性的だな)
役人はそういう目でベルガルドを促した。
その後偽造した身分証を見せ持ち物をチェックされ、二人は難なくゲートを通ることができた。
「意外と簡単に通れちゃうものなんだね、チェックが甘いよ」
カイはそう言いながらも、ほっとしたような顔をしている。
「そうか?どうやらゲート自体が魔族とヒトを判別する装置になっていたらしい。少し耳鳴りがしたしな。それにしても・・・魔力を封じるのは結構しんどい。」
ベルガルドは息苦しそうにコートの第1ボタンを外す。
「そりゃあそうだよ!ベルみたいなバカでかい魔力抑えるだけでも一苦労だしね。」
「お前は平気そうだな、楽勝って顔してるぞ」
「僕は魔力自体たいしたことないし、コントロールが得意だからね」
「羨ましいかぎりだ。とりあえずアーレン城に着くまでは魔力を封じてろ。途中でバレるのもおもしろくないからな」
二人は付近の馬師に自分たちの馬を預け、アーレン市街地の方に向かって行った。

『―アーレン城内、廊下』

この城に仕えているらしい男が廊下にいる。髪は白髪で薄く、白ひげを生やした初老の男だ。しかしその年齢に似つかわしくなく、甲冑を身に纏い、歩くたびにカシャカシャと音をたてている。
その男は巨大なドアの前でうろうろと落ち着きなく歩き回っており、どうやらドアをノックしようかしまいか迷っているようだ。
その様子を見かねたメイドがその男に話しかけた。
「副団長様・・・女王陛下に謁見ですか?」
話しかけられた白ひげの男は、一度びくっと体を震わせた後、メイドの方へ振り返った。
「なんだ、お主か。びっくりさせるでない。」
「申し訳ありません・・・ずいぶんと挙動が不審だったものですから」
その言葉を聞いて男はがっくりと肩を落とした。
「メアリー・・・お主は相変わらずはっきり言う奴じゃ。それがな・・・聞いてくれるか?」
男はちらっと老け込んだような目を向けた。
正直メイドはたいして興味も無かったが、聞かざるを得ないような雰囲気だったため、仕方なく男の話を聞くことにした。
「どうかなさったんですか?」
「そうかそうか、そんなに聞きたいか。」
「全然。」
「・・・。実はな、護衛団長から聞いた話なんじゃが、近々女王陛下が魔族の国レオーベンを訪問しようとしているらしいのじゃ・・・」
「はぁ・・・あの女王陛下が?とても信じられませんが。」
「そうじゃろ?だが、女王陛下がレオーベンの王に手紙を書いているところを見たと団長殿が申しておる・・・」
「あの冷静沈着な女王陛下が、わざわざ魔族の国に殺されに行くとはとても思えませんが。」
「わしもそう思ってな、女王に真偽を確かめようと思ってここでうろうろと・・・」
「副団長様・・・」
「なんじゃ?メアリー」
「恐れ入りますが、女王陛下のお考えですから副団長様が余計なことを考える必要はないと考えます。」
「そうかのお・・・うむ、そうなのかもしれんが・・・わしは心配なんじゃ。最近物騒な事件も各地で起きているしの。女王陛下に何かあったら・・・」
「女王陛下のことはご心配なさらずに。そのための護衛団ではありませんか。副団長様も護衛に専念すれば、女王陛下の安全は保障されるでしょう。」
「うむ、そうじゃな。うむ・・・」
副団長は自分に言い聞かせるように何度も頷いた後、寂しい目で謁見の間に通じるドアを見つめた。そして決心したように廊下のあちら側へと引き返して行った。


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