はるのいろ#1-3
そこへ、
「こらぁ、藤川ぁ!今は授業中だろっ。早く教室に戻れっ!」
教師らしい人がそう叫びながら男子生徒を追い掛けていた。
「くそっ。」
小さく呟いて男子生徒は走り出した。
「あ、あのっ。財布…」
私がそういうのもむなしく、男子生徒と教師は目の前を駆け抜けていってしまった。
…どうするんだろ…。
後で困るんじゃないのかな…。
今なら、まだそんなに遠くに行ってないよね。
この辺りを探してみよう…。
いつもの私なら絶対にこんな親切なことはしないはずだけど、この日は初めて授業をサボったことへの罪悪感の償いと、授業をサボったという変な仲間意識からこんなことをしようと思ったのだろう。
男子生徒を探してその高校の周辺を一時間ほど歩いた。
しかし、それらしき人は見つからなかった。
もう見つからないかも…。
諦めて交番に届けよう…
と思った瞬間、
「あっ!」
そう言うと同時に私は走っていた。
「あのっ!これ…」
多少息を切らせながら言った。
「ああ…お前、さっきの…。ありがと。」
「いいえ。」
そう言って私がその場から立ち去ろうとしたら、腕を掴まれた。