旅立ちの日-7
「しかし……」
一巳が土田に語り掛ける。
「女ってのは買物と化粧に時間の掛かるモンだなぁ」
土田はニヤつきながら頷くと、
「この前なんか2時間だぞ!〈着ていく服が決まらない!〉ってあれこれ引っ張り出して……」
ちょうどその時、玄関ドアーが勢い良く開いた。
「お待たせしました〜!」
美那と里香が出てきた。それを見た一巳と土田は、口を半開きで魅れている。
胸元の開いたシャツにワインカラーのロングカーディガンを重ね着し、脚にはぴったりとした黒のスパッツと踝までのブーツを履いている。
里香ははにかみながら、
「何だか……自分じゃないみたい」
照れている顔はすごく嬉しそうだ。
一巳が感嘆の声を挙げる。
「スッゴい似合ってる!背丈があってスリムだから身体にぴったりの服が映えるね」
土田もつられるように、
「スッゲー似合う!下に見えない。3〜4は歳上に見える」
一巳のプランのひとつは〈里香を変身〉させる事だった。美那に彼女の普段を聞いたところ、〈おとなし目で地道〉だと言っていたからだ。
「それじゃ、行こうか」
「行こうかって、何処にです?」
オレは里香を見つめながら、
「デートさ。今から〈高校生〉じゃ行けない場所へ」
と、言った途端、3人は驚きの表情と声を出した。
おそるおそる美那が聞く。
「それって……ホテルとか?」
「アッハッハッハ!心配するな!それ以外だよ」
すかさず土田が、
「イヤッ、冷酷なオマエなら有るな」
「オマエな。人を〈殺人鬼〉みないに言うな!オレはいつも客観的に物を見てるだけだよ」
3人のやりとりを里香は黙って見ていた。その言葉の掛け合いが面白いのか、時折、笑みが浮かばせて。
「まあ、ちょっと落ち着け!肝心なのはお前等じゃなくて彼女だろう?」
一巳は里香を見て、
「どうする?勝手にオレが考えたんだけど……」
里香の発言を見守るオレ達3人。しばし、ふせ目がちに思案した後、弾んだ声で言った。