旅立ちの日-6
「オマエさ。いつも女と何処いってる?」
翌日。一巳はクラスメイトに彼女とのデートの行先を聞いた。里香との参考にするためだ。
彼らの行先は実にバラエティに富んでいた。映画、スポーツ観戦、遊園地、海、山。この辺はありふれたパターンだが、ライブハウス、ディスコ、ラブホテル、ゲームセンターというのもあった。
昼休み。いつもの場所でタバコを吹かしながら一巳は思案していたが、
「ヨシ!これで行くか」
と、独り言を言った一巳を、土田は不思議な顔で眺めていた。
夕方、土田の部屋で美那に一巳の考えたデートプランを伝える。
すると、美那は困惑した面持ちだ。
「でも、思い出にはなるさ」
「まぁ、確かにそうだろうけどねぇ」
ため息混じりに答える美那。それに頷く土田。何だか乗り気じゃない二人に、一巳は少し苛立ちを覚えた。
「あのなぁ、人に〈思い出作りに彼女とデートしてくれ〉と言ったうえ、プランも考えさせといて、そんな言いぐさは無いだろう!だったらオレは降りる」
二人は慌てて一巳を止めて説得すると、彼のプランを了承した。
一巳はニッコリと笑うと、
「じゃあオレのプランで進めるから。まずは今度の土曜日の夕方だ。頼んだよ」
そう美那に伝えると一巳は〈じゃあバイトがあるから〉と、部屋を後にしようとする。
が、その途中、思い出したように、
「そうそう。忘れるトコだった。プラン通りにやるとオレの資金が底をついちまう。だからカンパを頼む。1人頭5,000円だ。じゃ!」
一巳は背中越しに片手を挙げて帰って行く。残された二人は驚きの表情で彼を見送ったのだった。
ー翌土曜日ー
デート当日。里香は集合場所である美那の自宅に少し遅れて到着した。
「ごめんなさい。遅れてしまって」
一巳は〈いやいや〉と首を振ると、美那の方を向いて、
「じゃあ、頼んだぞ」
一巳はそう言うと、土田と一緒に自宅を出ていった。
「な、何なの?」
里香は、意味が分からず一巳達を目で追いながら、美那に聞いた。
すると美那は、
「いいから任せて!」
と、笑みを浮かべながら支度を始めた。
それから1時間が経った。一巳達は玄関前に立ちっぱなしで待っている。