旅立ちの日-10
「よくそんな風に見れますね!私なんかまともに見れなくて……」
一巳は笑いながら、
「経験の差かな。でも、君もしっかり見てたじゃないか」
「!!……」
「君が驚きながら画面に釘付けだったのをね」
と、その時のポーズをおどけて見せる。
里香は俯てしまった。耳が真っ赤だ。一巳は言い過ぎたと慌ててフォローする。
「まあ、誰でも興味あるからね」
里香は上目遣いに一巳を見ながら、
「一巳さんは経験あるの?」
里香の質問に思わず吹き出しそうになるのを一巳は堪えると、
「…そ、そうだな」
と言って、ハイライトを取り出し火を着けた。ゆっくりと一口吸いながら遠くを見つめる素振りで、
「最近まで付き合ってた女がいたんだ……」
里香は〈ふーん〉と言いながら2杯目のビールを飲み始める。
大きな瞳はふせ気味になり、赤い唇が色っぽい。
「何で別れたの?」
この質問に一巳は苦笑する。見た目の大人っぽいのとは対象的だ。
「ま、色々とな……今は働きながら学校に通ってるよ」
「私にも彼が出来るかなぁ」
里香はかなり酔ったらしく、本音を語り出した。
一巳も頷きながら、本心を見せる
「出来るさ。この前も言ったけど自信もちな。今日の君を見た時、オレ達の反応を見ただろう?このまま連れて帰りたいくらいさ」
里香はニッコリ笑って、一巳を見つめると、
「ありがとう!私、一巳さんとなら良いかなぁ」
「バ〜カ。そういう事は大事な人に取っておけ。勢いで言うんじゃねぇよ」
そこからはお互いの生い立ちや、共通の友達である美那や土田との事など、止めどもなく話は流れて行った。
「里香……里香、起きなよ!」
聞き慣れない声で里香は目を開けた。写る光景がいつもと違う。
「里香……」
呼ばれた方に顔を向けると美那がいる。里香はやっと事実を把握した。美那の家に泊まりに来てたのだ。