月-1
忘れられないの。
もう、五年も経つのに、
忘れられないの。
ふとしたときにいつもあなたの事を思い出す。
もう、五年も経つのに。
どうしてかな。
「いい思い出」とは言えない、切なすぎるあなたとの思い出。
まるで、つい先刻の事のように思い出すよ。
あたしの初恋だった…。
クソガキのクダラナイ恋だったかもしれないけれど、その時のあたしにとって、本気の、そして純粋な恋心だった。
あたしは月、あなたは太陽。
太陽の光で月は輝くの。
あなたが傍にいるだけで、幸せだった。
あたしは光に包まれ、輝いていた。
でも、月は光を失った。
あなたを失ったの。
太陽の光が無ければ、月は輝けない。
漆黒の闇。
周りは全部、黒。
何も見えない。
月は光を失った。
残ったものは、得も知れぬ寂しさ。それだけ。
月は光を求め、太陽を探した。
暗闇を彷徨う。
でも、探し方を誤った…
光を見付けるどころか、傷を増やす一方だった。
月は、音もたてずに壊れていく。
その破片を拾おうともせず、ただ壊れていく。
その破片が、自身の心だとも知らずに…
漆黒の闇に侵食されていく。
月は光を失った。