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飃(つむじ)の啼く……
【ファンタジー 官能小説】

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Whirlwind-6

「その呪いはね、呪いを受けたもの同士が愛を交わすことによって、聖なる武器を産むためのもの。」
女は続けた。
「青嵐会という組織が…わが子に呪いを行い役目を果たす親を4人選んだ。結果女の子が二人、男が二人生まれた…あなたを含めて。」
俺は、ぐるぐる回る頭の中から何か言うべき言葉を探そうとした。だが、まるで水を満たした洗面器の栓を抜いた時のように、まともな言葉は排水溝に流れてしまって、それをとめる手だても無かった。
「おまえ…ネオナチか何かか?聖杯でも探してる類の奴なのか?」
手の中のバカラグラスは自分の体温で温まってしまっていた。
「いいえ。私たち青嵐会の目的はそんなものではないわ…ただ力が欲しい。そして、希望が。貴方にはその希望の一端が懸かっているの。」


彼女は終始落ち着いた口調で説明した。子供に、虹の仕組みを教えてやる親のように。
「貴方と、もう一人の狗族に一人ずつ、16歳の誕生日を迎えた女の子を選んで結婚してもらいます。そして、聖なる武器を生み出し、あたしたちのために戦ってもらう…そして、貴方のために。」

氷が全て解けてしまう前に、グラスをあおった。
「16歳って…その子たちの意思は?大体、あんたたちと俺に一体どんな関係があるって…」
「なぜ貴方のお母様が父親として貴方のお父様を選んだと?」
唐突な問いに、空っぽの頭が反応する。女は続けた。
「貴方のお父様…ライカンスロープだったって聞いているわ…つまり、人狼ね。」
彼女の目を見るのも、俯くのも怖かった。目を見れば心の置くまで見透かされそうだし、俯けば会話が途切れそうだった。俺はただ、余裕があるように装って窓の外を見ていた。
「で?何が言いたい。」
「貴方のお父様が“選ばれた”のは・・・人狼としての戦闘能力の高さを見込まれたため・・・そして、死んだあとも尚、復讐を望んでいたから。」
その点については、俺のほうがよく知っている。痛いほど。そして、その復讐とやらにどれだけ苦しめられているかも。
「だから、その復讐と、お前たちとの間にどんな関係があるってんだよ!!」
思わず声を荒げる。
「“奴”の居場所を知っているとでもいうのか?」


知ってるはずが無い。
世界中が追ってきた。奴のことは、誰も知らない。正体も、動機も…生死すら。そして、それでよかった。それで、少なくとも俺の世界は…夢を見ていないときに限っては平和で、おそらくそれが続けば、自分の中の未練たらしい父親の亡霊だって眠りに付くか、滅びるか…とにかく消えてくれるだろうと思っていた。見つかるはずが無い。そして、そうあって欲しかった。

「ええ。知っているわ。」
彼女の顔を見る。今なんと言った?
「知っているわ。」
俺は立ち上がりそうになるのをようやくこらえ、まっすぐ体を彼女に向けた。自分が何故こんなに驚愕しているのか…自分の中に巣食う亡霊がそうさせているのか…それとも、いつの間にか、自分自身が亡霊になっていたのか…わからなかった。
「知ってる?」
俺は馬鹿みたいに繰り返した。頭の中ではとっくに理解しているのに、耳だけがもう一度その言葉を聞きたがってでもいるように。
「あなたのお父様が、愛しても居ない日本のバケモノとの間に子供を残そうとした理由も…そこにあるのよ。」

目を白黒させている俺に、彼女は最初から話して聞かせた。


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