さよなら 2-1
―今までありがとうね。
楽しかったよ。
彼に別れを告げ、一緒に暮らしていた部屋を出て行く日、仕事で不在だった彼へ手紙を残した。
正確には『彼が居ない隙に』だが。
彼との最後のセックスから今日まで一週間。
私は彼に顔を合わせることが出来ない心境にあった。
彼の趣味に付き合い、出歩いているうちに、私は私で遊び仲間が出来ていた。
そしてそのうちの一人が私に好意を抱いていることに気づいていた。
りゅうたとの最後のセックスの翌日、その彼と初めて二人で会った。
自分から別れを切り出しておきながら、淋しかったのだ。
無理にかっこつけた結果だ。
私はあの部屋には帰らず、この男の部屋に居座った。
『しばらく居ればいいじゃん。』
と言った彼の言葉に甘えたのだ。
彼は毎晩腕枕をしてくれた。
男の腕の中で眠ることで悲しみや不安から守られている感覚になる。
空気にすら触れたくないかのように彼の腕にすっぽりと埋まり、浅い眠りを繰り返した。
居座り始めて四日目の夜。
私はいつものようにベッドの上の彼の右側で背を向けて背後から体を包み込んでもらっていた。
りゅうたに比べると身長は高くないが、ガッシリとした体型の彼の腕は、遠慮なく甘えることが出来る。
ただ、何故か熟睡は出来なかった。
この日も浅い眠りを繰り返し、次の睡眠の波を待っていた。
ふと、彼の唇が私のうなじに触れるのを感じた。