難読語三兄妹恋愛暴露~長男Ver.~-7
「普通ならお前だけ受け付けなくなればいいじゃん。なのに、お前以外なんておかしいだろ?」
また詩歌は頷く。
「もう二度と言わねぇからな。ちゃんと聞けよ?」
こくんこくん。
詩歌が二回も頷いたのを確認して玄人が少し微笑んだ。
「俺にはお前しか合わない運命なのかもなって…思ったことが…ある…」
沈黙が流れた。思いの外、長い沈黙が流れた。
「あ、ほら!お前って気ぃ使わないしっ、チビの頃から一緒だしっ、えと…あの、俺のことだったら大抵分かってんだろ?そういう意味で言った訳で!いや、何てゆーかその…えっと…ねぇ?」
詩歌はそんな玄人を一言も喋らず真顔で見つめていた。
またもや流れる居たたまれない沈黙。それを破ったのは詩歌だった。
「で?」
「で?…って…え?」
「結局、あんたはあたしのこと好きなのキライなの、何なの?」
確かに。
こうなったら運命どうこうよりも、玄人が詩歌を好きかキライかが重要になってくる訳で、例によって玄人はまた慌てふためく訳で…。
「分かんねぇっ!」
玄人はそう言って顔を真っ赤にした。
「はぁ?」
詩歌が呆れたように首を傾げる。さっき泣いていたのが嘘のようだ。
「今更んなこと聞かれても分かんねぇよ!」
「あっそう」
背筋も凍るような冷たい声だった。
次の瞬間、玄人の未使用の…いわゆる急所と言われる場所に詩歌の膝がめり込んだ。
「……っ!!!!」
ゆっくり崩れ落ちてゆく玄人。
「男ならハッキリさせろ。だからいつまでたってもチェリーなんでしょうが」
そんな玄人に詩歌の言葉がぐさぐさ突き刺さる。
「うた子…おま…」
詩歌はかがんで玄人を見つめた。
そして太陽のような笑顔で
「きっと玄人はあたししか合わない運命なんじゃなくて、あたししか好きになれない運命なんだよ。いつか好きだって言ってもらうからね?」
と言うと、悶える玄人を残し暗闇の中へ消えていった。