難読語三兄妹恋愛暴露~長男Ver.~-6
「はぁ…」
玄人が短く息を吐いた。
「こんなんじゃなかったら今頃俺は普通の楽しい恋愛してたんだろうな」
「ごめんてば…」
詩歌じゃないような暗い声。
「俺実はモテんだぞ?」
「知ってる。ごめん…」
「こんなじゃなきゃ絶対…」
「ごめんてばっ!」
玄人の声を詩歌は大声をだして遮った。だけどそんな詩歌の瞳は周りが暗くても分かるくらい潤んでいた。
「…玄人がモテるってことくらいずっとずっとずぅーっと前から知ってるよ」
詩歌は涙を堪えているのか声が震えていた。
「…だからだもん」
詩歌の声に驚いて固まっていた玄人がぴくんと反応した。
「あたし、玄人が他の子と仲良くしてるの嫌だった。見てるとムカつくしイラつくし黙ってらんなくて…。ちっちゃい頃はその気持ちがなんなのかも分かんなくて玄人に当たってばっかだったけど…今は分かる…」
詩歌はぐすっと鼻水をすすって、玄人を見つめた。多少混乱気味の玄人もちゃんと詩歌の目を見ている。
「玄人はあたしなんかキライなのかもしんないよ。でもあたしは…好きじゃなきゃ…高校も、大学も、同じとこ…選ばな…い…!」
後半は絞りだすように呻いただけだった。詩歌は手のひらで口元を押さえると声を出さずに、泣いた。
そして、途切れ途切れに「ごめんね、本当にごめんね」と何度も繰り返した。
玄人は眉をしかめてそんな詩歌を見つめていた。
真剣にゆっくり、頭の中にあるゴタゴタしたものをゆっくり整理しだして…
そして
そっと詩歌の頭に触れて自分の方へ押しつけた。
「えっ…くろー…と?」
「…少し黙ってろよ?」
詩歌はこくんと頷いた。玄人は深呼吸すると一つ一つ丁寧に語りだした。
「まず、正直ビビった」
詩歌は泣きながらもふふっと少し笑った。
「でもなぜか、予想外ではないような気がする」
「…?」
詩歌が顔をあげた。
「こんな体質になったのは確かにお前の暴力…いや、もはや犯罪と言っても過言ではない行為のせいだけど、おかしいよなって思ったことは何度もある」
「何?」
玄人は恥ずかしそうに頭を掻いた。