難読語三兄妹恋愛暴露~長男Ver.~-4
そんなチェリーボーイも大学生ともなれば
「おい、玄人。今日合コンあんぞ。来るよな?」
というお誘いも増えるわけで…。
「行かねぇ」
「速答かよ!」
「速答だよ。絶対行かねぇ。レポートやってる方がマシ」
「んだよ。ノリ悪いなぁ」
違うのだ。本心はめちゃくちゃ行きたいのだ。しかし、玄人の体質が体質なだけに仕方ない。
「悪いな、じゃ」
そう言って玄人は握りこぶしを震わせながら、図書室へ向かった。
そのやりとりは詩歌のすぐ後ろで行なわれていて、聞き耳をたてていた詩歌も玄人を追うように教室を出ていった。
玄人は図書室の隅の広いテーブルに一人で座っていた。
広がる原稿用紙。隣には心理学の分厚い参考書。あのレポートに心理学?こいつはどこまで深く追求する気だ。
「玄人、行かないの?」
詩歌は玄人の向かいに座った。
これはアタシの勝手な意見だけど、アタシはこの二人の組み合わせが好きだ。玄人の傍にピッタリなのはイケてるギャルでもなく、清楚なお嬢様でもなく、明るい弾けるような詩歌だと思う。ていうか、詩歌以外考えられない。
この向かい合う光景だってすごく絵になっているのに
「お、うた子。盗み聞きも覗き見も悪趣味だぞ?も少しマシな趣味作れ」
…ぶち壊しだ。
「違う!今回はたまたま聞こえたのっ。で、行かないの?」
「仕方ないだろ」
「そうだね、ヘタレ玄人だもんねー」
詩歌はニッと笑いながら頬杖を付いた。
そんな詩歌を玄人はキッと睨む。
「俺はヘタレじゃねぇ!」
「ふ〜ん、じゃあ何で行かないの?ヘタレ克服しに行きゃいいじゃん」
「……これ片付けねぇと」
玄人はシャーペンでコンコンと原稿用紙を叩く。しかし
「んなの後でいいよ。あんた逃げてんでしょ?」
と詩歌は少しキツく言い放った。
「は?」
「レポート理由に逃げてんじゃん」
詩歌は玄人を真直ぐに見つめていた。
しばらくお互い何も喋らず沈黙が続いたが、急に玄人がテーブルに広げていたものをガサガサと乱暴にカバンにしまいだした。
そしてバンッとテーブルを叩いて勢い良く立ち上がった。