難読語三兄妹恋愛暴露~長男Ver.~-2
「走ったんすけど…」
「一生懸命走ったんすけど…」
苦笑する二人。しかし意外にも教授は楽しそうに笑っていた。
「たった今、君らは何度言っても変わらないということがハッキリと分かった。いいか?世の中、成績だけじゃやっていけない時もある。そこでぇ!玄人と詩歌にはぁ!特別にぃ!レポート提出の課題をやろーう」
流れる沈黙…そして。
「ぇええッッ!?絶対やだッッ!!」
二人は声を揃えて心の底から不満をぶちまけた。
しかし教授は全く聞く耳をもたず、さらに続けた。
「レポートの題名は『なぜ人は言われたことを守れないのか』だ。一週間以内だからねっ♪」
400字詰めの原稿用紙の束がビッと突き付けられる。これじゃあ、レポートというより反省文だ。
「さっ、早く席についちゃって!」
詩歌はまだ何か言いたげだったが軽くため息をつくと、渋々空いている席に座ってノートを広げた。
玄人もそれに習って詩歌の隣に腰をおろした。
淡々と教授の授業が執り行われる中、彼らの友達が笑いを噛み締める「ブッククク…」という声が続いたのは言うまでもない。
さて…。
そこのあなた!玄人は女性恐怖症なのにどうして詩歌は平気なのか疑問に思っていませんか?語ると長くなるのだが、これには理由があるのだ。
むか〜しむかし、それは玄人がまだ小さい時、それこそまだアタシが生まれて間もない時に古谷一家が隣に引っ越してきた。
「一緒にあそぼ!」
家に古谷一家が挨拶にきた時、玄人はそう言って同い年の詩歌の手を引いた。
「え…うぅ…」
恥ずかしがってパッと詩歌は玄人の手を退ける。
「どうしたの?あそぼ!」
不思議そうに首を傾げて玄人はまた手を差し出した。
「……うんっ!」
詩歌は嬉しそうに頷いてその手を取った。
…がしかし、これが悲劇の始まりだったのだ。
「玄人くんー!一緒に遊ぼ!あれ?誰その子?」
公園に着くなり、一人の女の子が玄人に駆け寄る。
「アヤちゃん!この子はシーカっていってねぇ…」
「クロートは!」
急に詩歌がずいと女の子の前に歩み寄った。
「クロートは、シ・イ・カ・と!遊ぶのーっ!」
公園に響くおたけび。引きつるアヤちゃんと幼き玄人。に、すっごい笑顔で振り返る詩歌。