ノスタルジィ-3
「友達のいるクラスを3つくらい廻って借りたんだ」
「お父さん何の話?」
娘の鈴華が訊いた。その隣に座る聖も伸治の次の言葉を待っている。
伸治は〈仕方ないなぁ〉と言いながら、まんざらでもない口調で、2人が近づく事になったエピソードを語った。
それを聞き終えた鈴華と聖は、頬を赤らめて破顔しながら言った。
「お父さん!やるじゃん」
「なんだかこっちが照れちゃうよ!」
伸治と美鈴は、子供達の反応が素直だった事に喜んだ。
伸治が続ける。
「お母さんの事はその半年前、入学当時から憧れていたんだ」
その言葉に今度は美鈴が頬を赤らめる。
「何言ってんのよ。変なお父さん」
美鈴はそう言って照れをごまかそうとするが、伸治はさも当然と言った口調で、
「お前ね。自分が一生連れそいたい相手に嘘なんか言えないよ」
その言葉に美鈴は何も言えなくなった。
「私も早く人生のパートナーになるような人を見つけようっと」
「オレも。早く彼女見つけよう」
そう言う子供達の言葉に、伸治は笑いながら諭すように言った。
「なかなか見つからないぞ。オレは運が良かったんだ。初めて恋した人が、最高のパートナーになったんだからな」
伸治は白い歯を見せて笑った。
…「ノスタルジィ」完…