Authorization Lover-VOLUME5--1
誰かの代わりでも暇潰しでも構わない。
好きなの。
どうしようもないの。側に居させて。
元から捨て身の恋だったのかもしれない。
……だから駄目になったのかもしれない。
ナルシズムとプライドが両立しない恋愛は成就しないし長続きしないって七緒が言ってたけど本当だわ。
見事私達は壊れた。
初めて会った日は鮮明に覚えている。
──私の両親の葬式の時だ。
雛菊はまだ六歳だった。家族で旅行に行く途中に交通事故に遭い、雛菊だけが奇跡的に助かった。母が雛菊をかばってくれたおかげだそうだ。しかし、あの時の事はあまり正直覚えていない。
ただ、体のあちこちが痛み、母親の体が暖かった事だけを雛菊は覚えていた。
「何であの子だけ助かったんだろうね」
「家は家族が多くて引き取れませんよ。」
「大体あの子の母親は実家と勘当して家を出たんだろう?」
今まで会った事のない親戚達が、壊れたラジオのように調子の外れたことを永遠のように話している。
雛菊は、庭先に座ってその話をぼんやりと聴いていた。
雛菊はフラフラと庭から出ていく。
「ただ保険金が…」
「幾等だい?」
コソコソ耳打ちする。聴いた男は目の色を変える。
「それは凄い!」
「家…実は一部屋空いてるんだよね。」
「ずるい!…あれ雛菊ちゃんは?」
やっと雛菊の不在に気付いた大人達は慌てて彼女を探し出した。
雛菊の足は自然に両親とよく遊びに来ていた近くの公園に向かっていた。
夕暮れ時だからか子供は少ない。雛菊は引き寄せられるようにブランコに腰をかけた。
ぼんやりとしながらも、急に何かを思い立ったように、いきなりブランコを漕ぎ出す。
強く強く。
何かを忘れるように。