Authorization Lover-VOLUME5--3
「ちょっと目を離したすきに…」
「あっ!帰ってきたよ!」
…着いたのは雛菊の家だった。
「雛菊ちゃん大丈夫?」
親戚達が、手を差し出しながら雛菊に近付いてきた。雛菊はさっと銀の後ろに隠れた。
親戚は差し出した手のやり場に困ったように手を空中で漂わせ、眉に皺を寄せる。そして銀に向き直った。
「ちょっと…君どこのこ?」
「僕は「銀っ!!」
いきなり初老の男が現れて、銀の言葉を遮った。老人は怒っているのか肩を震わせている。
「じぃちゃん。」
「こらっ!どこいっとったんじゃ、お前は!葬式連れて来たのにご挨拶もせんと…」
「なぁ、雛菊も一緒に帰ってええ?」
「黙らっしゃい!ったくお前は………。…今何と言った?」
「雛菊帰るとこないんやて。ウチに来てもええやろ?な?」
銀は、目を丸くして様子を窺っている親戚達を気にせず続けた。じぃちゃんと呼ばれた老人は何やら考えているようだ。
「ちょっと待ちなさいよ!?」
親戚の一人がやっと正気になったようだ。
「雛菊ちゃんの気持ちも考えず、いきなり何勝手に決めてるのよ?この子に決定権があるのよ!」
「いいよ。」
雛菊はポツリと言った。その答えに親戚一同は、目を丸くする。
「ええの?」
「あたし銀のとこに行きたい。」
親戚達は未だ唖然としていた。
少し熱が冷めた親戚達は、大人の話し合いをするということで、雛菊と銀は離れに連れて行かれた。
小一時間した後分かった事だが、実はじぃちゃんこと山本玄三は、雛菊の両親の古い友人だったらしい。
今日は雛菊の両親急の訃報を聞き、駆け付けたそうなのだが…
一時間後、何故か意気消沈している親戚と喜色満面の山本が現れ、本当に山本の元で暮らせる事になった。
詳しい話を聞くと、銀と山本は血は繋がってはいないらしい。銀は拾われた子、ということだ。あまり詳しくは訊いてはいなかった。
そこまで詮索する気はなかったし、どうでも良かった。ただ、一人になるよりかは幾分マシだからだ。
その日の夜は、初めて両親以外の人と体を寄せあって眠った。