Authorization Lover-VOLUME4--3
「いややな〜谷川君僕に気ぃあるん?」
「死ね。」
「おぉ怖。」
銀は大袈裟に体を抱え震わせた。谷川はどっと疲れた。
コイツは苦手だ、と彼の全神経が告げていた。
しかし…
この若さで専務とは異例の出世だろう。若手の社員が目立つ榊でも特に銀は特異な存在であった。
木原十夜も若いが、彼は元々重役であり、筆頭株主である父親の力添えもあっての事だ。何の後ろ立てもない銀が、この地位に立つまでには並大抵の努力ではなれない。
だが、この人を食ったような態度は谷川を疲弊させる。
「僕の仕事言うても、色んな仕事に了承の判子捺すだけやからなぁ。まぁ、サボっても意外にバレへんのや。」
銀はいきなりペラペラ話しだした。そして、一端溜め息をつく。
「そやけど…ゴルフの接待やら僕嫌いやから逃げ回っててたんのが社長にバレたみたいやな。」
「だからなんだ?」
銀はチラリと谷川を見た。とは言っても、背が銀の方が高いので見下ろす形になる。
「鈍いなぁ…だからこんな子のお守りまかせられたゆう事や。」
「!」
途端に険悪なムードになった。
「悪かったな…お守りなんかよォ。」
「仕方あらへんわ。これも仕事やからな。」
銀は大袈裟に首をすくめた。
「ま、とりあえず僕は自分の後見人みたいなもんやから、気にせず好きにやってや。」
「はぁ」
「で、自分は宣伝部に所属してもらうで。来期の榊商事の新しい企画についての決定権を全て自分に一任する。」
銀は話し終わるとニヤッと笑った。谷川は額に手を置いて顔をしかめた。
「…いきなり新人にそんな責任負わせるのかよ。」
谷川は一瞬目の前が暗くなった。
「言うたやろ?判子捺すだけやて。気楽にしぃや。まぁ、お手並み拝見てとこやな。」
銀は腰に両手を当てて仁王立ちしている。
「あ、そや。企画にもこの計画流れたからな。」
「はぁ?」
「良い方を選んでや。両者…仲良くな」
含みを持たせたような仲良くの意味が解らなかったが、とりあえず谷川は渋々頷いた。