Authorization Lover-VOLUME4--2
「そうじゃろ。儂の会社だからな」
しきりに頷いている。
「あの…何で俺をここに呼んだんすか?」
「おう!そうじゃ。本題を忘れておった。──菜菜子。」
「はい。」
どこにいたのか、黒髪でオカッパの女性が一子に書類を渡した。
谷川は目をパチクリした。
「谷川は仕事を覚えるまでしばらく市井の下で働いて貰おうかの。」
「はぁ…」
谷川は気のない返事をする。どうもこの女にはリズムを崩される。
チラリと銀と呼ばれた男を見る。銀は気付いてニコッと笑って手を差し出した。
「よろしゅうお願いします、僕は市井銀言います。」
「谷川史朗です。」
握手した瞬間、何故かゾクッとした感覚が谷川の体を駆け巡った。谷川は思わず慌てて手を引っ込めてしまった。
銀は細い目をさらに細くして谷川を面白そうに見つめた。
「さぁ、これで集会は終わりじゃ。各自部署に戻ってよいぞ。」
他の重役は面食らったように一子を見た。
「おい、何のために俺ら呼んだんだよ。」
更科の髪がいつもより逆だったようにみえる。
「新人の世話をしてくれって僕ら呼んだんじゃないの?」
京本は拍子抜けしたように言った。
「下らぬ…」
十夜は無表情で下を向いた。一子はニヤリと笑って周りを見渡した。
「いや〜谷川が来てから誰に任せようか決めようと思ってたんじゃ。それで市井に決めた。」
「なんて適当な…」
京本は呆れたように顔を手で覆った。
「谷川君、こっちや」
銀は一貫して我関せずといった態度を崩さず、谷川を手招きした。
「あ、あぁ。」
慌てて後を追う。
その瞬間、いきなり京本に手を引かれた。そして耳打ちされた。
「市井には気をつけて」
「!」
あれはどういう意味だったのか。
谷川はじっと銀を見つめた。視線に気付いて銀はおどけた顔をしながら、手を頬に当てる。