恋愛模様〜ラブレボ〜-5
〈校内で会うのは2回目だな…。〉
「会長…。ものすごく笑顔ですが」
〈顔に出すな、未熟者…〉
ゴホンッと咳払いして、五良は照れを隠す。
「気のせいだ。行こう」
「あっ!烏丸さんよ。歩き方も優雅ねぇ〜」
奈都はヒョイッと覗いてみたが、烏丸氏の姿は既に遥か遠かった。
「緑里ちゃん、もうすぐ嵐が来るかも…。」
「んん!お得意の勘ですかー。奈都のお天気予報当たるもんね。」
奈都は緑里によっかかって、
「お天気じゃあなくって…。心の中。」
「あら、珍し。悩み事?いつもの元気な奈都らしくないなあ。心配するじゃん。何でも聞くよ」
なでなで。緑里は、らしくない奈都の頭をなでる。
「ん…。ありがと。今度話すね。」
「あたしら、奈都の味方だからね…。」
雨の日の出来事は、五良と奈都、それぞれに影響を与えていた。
塾を終えた奈都は、大きく背伸びをして、時計を見た。
「8時半か…。いつもより、遅くなっちゃったな。」
塾は駅裏にある。商店街があり、人通りも多いが、ほとんどの店は8時を過ぎると閉店してしまう。
「早く帰ろ。」
奈都は帰路を急ぐ。
塾は高1から通っていたが最近、近くにゲーセンがオープンし、緑里が警告していた柄の悪い男子高の生徒らが、そこでよくタムロっている。
〈なんだか、胸騒ぎがする。〉
奈都は得体の知れない不安を感じていた。もうすぐ、ゲーセンの前だ。
〈緑里ちゃんが、気を付けろって言ってたのこの場所だよね…。嫌だなあ〉
総じて嫌な予感は、よく当たる。
走って通り過ぎようとしたその時…!
「ちぇっ!おい、今からどーするよ。金も尽きたし…。女、ヒッカケるか?」
数人の学ランを着た男達が、ゲーセンの自動扉から現れた。奈都とぶつかりそうになる…。
「きゃ…」
奈都が通り過ぎるのと、男達がゲーセンから出て来るタイミングが、ドンピシャだ。
「おおー。ナイスタイミングだぜ。彼女、大丈夫?」
奈都は、自分のどんくささを呪った。
「はい。すいませんでした。」
とりあえず、謝ってその場から立ち去ろうとした。
ガシッ!腕を捕まれる…!
「キミ、可愛いいね〜。俺らと遊ばん?暇してんだよな。」
奈都は、全身に嫌悪感が走った。頭はガンガンと、警報が響いている。
「いいえ!帰ります。離して下さい。」
キッと睨む。
「気ぃ強いね〜。でも、手が震えてるぜ?」
「おい、隣りのカラオケ連れ込め。彼女、俺らといいコトしようよ」
奈都は震える身体を押さえつけられ、口も塞がれて、カラオケの一室に連れ込まれた。
勿論、曲など歌うわけない。
無抵抗の女の子を数人の男達が、揉躙するのだ。何の力も無いか弱き存在を…。
「っんんっ!〜〜むっ!」
奈都はソファに寝かされ、手をマイクのコードで縛られる。
男の手が足に触れられるが、奈都は出来る限りの力で蹴り上げる。
「生きがいいねぇ。ヤりがいあるぜ。おい、順番に廻すぞ、お前見張っとけ。」
数人の男達に押さえつけられ、奈都はあっさり自由を奪われた…。
「ヒヒ…タマンねぇな。」
その内、リーダー格の男がペロリと舌舐めずりして、奈都の制服のブラウスをひき千切る。奈都の瞳から、大粒の澄んだ涙がこぼれ落ちた…
バァーンッ!
「ぐはっ!」
「!!!」
部屋のドアが開く音と同時に、見張り役の男が、その場に崩れ落ちる。
「何だ…!てめぇ…ウガッ!」
奈都に手を掛けていたリーダー格の男が、宙を舞う。そのまま地面に叩きつけられた。
「お前っ。誰…!かはッ」
叩きつけられた男は、血を流していた。
残りの男達は、突然の乱入者を呆然と見ていた。
奈都は、その存在を確認する。
「ゴ…」
カチカチと歯が震えて声が出ない。
〈図書…委…さん〉
奈都にとって、天の助けである乱入者は、その場にいる輩を鋭い視線で一蹴すると、無言で奈都の手の戒めを解き、自らの上着をはおらせた。
部屋に入ってくるなり、見張り役のミゾオチに蹴りを入れ、リーダー格の襟首を掴んで、そのまま拳を顔面にお見舞いした早業を見ていた残りの雑魚達は、迂濶に手が出せなかった。
奈都を抱えて、そのまま部屋を出ようとした他称『図書委員』に、
「お…い。待てよ、てめ!俺らのお楽しみ…邪魔すんじゃ、ゲホ!ねぇよ!その制服、佰路だろう。坊っちゃんはお家でオベンキョして…な」
鼻血を出しながら、起き上がるカッコ悪いリーダー格。
無視する『図書委員』。
「誰だよ!てめぇ!なめた真似しやがって!さっきは油断したけどなあっ」
背後からリーダー格が殴りかかる。