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ルビコン川
【歴史 その他小説】

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ルビコン川-1

八年にも及ぶ長い戦乱は、ライン川を防衛線とするガリア全土の属州化で幕をおろした。
各軍団は、もはや定員の半数近くに減っていたがこれほどまで優秀な軍団兵はローマ全土を見渡せど、私の配下にしか存在しない。
今、ガリアを領土とした広大な国土。私は、腐敗した元老院にそれを託してよいものか悩んでいた。
イタリアと属州、ガリア・キサルピナを分けるルビコン川。ここを越えれば、ローマまであと二日ばかりの距離しかない。

私は、後ろを振り返る。

兵士たちはみな不安そうな顔をして私を見ていた。

『ここを渡れば人間世界の悲惨。渡らなければ我が破滅…』

あらゆる事が私の頭の中を駆け巡る。そして風が頬をなでた。

もし破滅するのならば、自分じゃなく世界を破滅させる方を望む。建国以来650年の歴史と伝統を壊す方を望む。

私の気持ちは、もう迷ってはいない!

私は兵士たちの方を振り向く

「進もう!兵士たちよ!神々の待つところへ!我々を侮辱した敵の待つところへ!諸君、賽は投げられた!」

兵士たちの歓声が辺りを包み込む中、私はただじっと小さな川の向こうを眺めていた。
まるで、かつてハンニバルがアルプスの頂上から見たイタリアのように…






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