遥かー鬼と人ー-1
No1.グラエッジ帝国
この世はグラエッジ王国によって支配されていた。
治安は恐ろしく悪く魔物が徘徊し、地上に転々と存在する集落、町を襲っている。
かといって国はこの現状を助長するかのように、高い税金だけをむしりとり、これに一人でも逆らうものがいれば、皆殺しにしていた。
なによりも、王キライは狂っていた。兵を送り、町などを襲わせ金品を奪わせていた。
気の向くままに、何の理由もなく・・・・・。
どこあるかもわからない帝国も含めて世界は蝕んでいっている。
「あらかた狩り終えました、副隊長。」
そういって一人のパゲタ兵士が返り血にほほを染めて、無機質な口調で報告を告げている。
グラエッッジ兵隊であった。
町には火が放たれ、家々は皆一様に燃え盛っている。
誰か一人が反抗したのだ。それだけで男はおろか、女子ども老人も皆殺しだった。
「そうか、では・・・」
---------------がしゃ---ん!!!
窓ガラスが割れ、散りばめられたガラスとともに一人の少女が飛び出した。
隠れていたようだったのだが・・・・
「あっつー・・!冗談じゃないわ!!こんなところで」
少女は新鮮な空気を深く吸い込んだ後、周りの痛いくらいの視線を見回した。
「あ・・・・ちょっと早すぎた?」
---------「まだ生き残りがいたのかぁ。とらえろ!!・・ん?」
副隊長の隣には、兵ではない一人の青年が立っていた。
誰もが驚いたことには、
その男の拳が上がったと思ったときには、もうその副隊長は十メートルほど吹っ飛んでいた。
銀髪に空のように透けた青の瞳をしていた。
ばかげた拳に似合う、ばかげた体格の持ち主ではない。それどころか、モデルのようにすらっとした体にうっとりするほどきれいな顔立ち、
ただ、無表情だった。
そして そんな男が大柄でゴリラのような男を、いとも簡単に動かなくしてしまったのだ。
他の隊員は明らかに圧倒されていた。
ふりしぼった残りの戦意で、飛びかかっていく兵士たちが紙切れのように舞い重なっていくのを、
少女はじっっと見ていた。
ひとしきり終わったあと、その青年はあたりを見渡した。
「あ・・・ありがとう!すごく強いんだね。私はフィア、あなたは?」
「・・シュウ。」
「シュウ、ね。わたしグラエッジ隊は最強だってきいてた。あなたいつもこんなことしてるの?」
「あいつらは運が悪い。俺は、グラエッジ隊はかならず全員殺す。
・・・隊長はいなかったな、何処だ?」
フィアは瞳をキラキラさせながら、シュウの言動に耳を傾けていた。
どうやら肝心の内容はぜんっぜん聞き取れていないようなので、もう一度繰り返す、