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多分、救いのない話。
【家族 その他小説】

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多分、救いのない話。-3--4

「理不尽や、最悪や」
 ぶつぶつと愚痴る。なんで二ヶ月間給料40%オフになるんだろうか。ちゃんと起こしたのに。
 そんな火口の給与明細に素敵なドラマを起こした張本人は、眠りの王子に笑みを浮かべながらなにやら言っている。聞き耳立てても仕方がないので、ニコニコ笑っている慈愛に話しかけてみた。
「久しぶりやなぁ。最近学校はどないや?」
「楽しいですよぉ。文化祭ももうすぐですしねぇ」
「文化祭か、懐かしいなあ。メグちゃんとこは何するん?」
「お化け屋敷。私がお化け役するんですよぉ。どろーんって。こんな感じに。びよーん、むにょーん、おろろろ〜〜ふにゃふにゃ〜〜ばけばけば〜〜」
「どろーんって一言も言ってへんやん!」
 突っ込みどころがありすぎるのでとりあえずそこだけ突っ込む。「?」と何故突っ込まれるのか分からないと表情で表現している慈愛は、どう見ても中学二年生の精神年齢だとは思えなかった。こっそりこの娘と、その担任と会話している母親を見比べてみる。
 ――よく似ている、というレベルを超えてもはや同一の顔に思える。違いは年齢だけ。きっと十四歳の時の社長は、慈愛と同じ顔をしていたのだろうと容易に想像がつく。遺伝子の途方もない確率を越えた奇跡。それが今、目の前に存在している。
 だが、個性が全く違った。性格面で似ている部分が全くなく、強いて言うならおっとりとしたお嬢様っぽいところがそうなのだろうが、母はそれを浮世離れしたカリスマ性に繋げているのに対し、娘は幼い人懐っこさに繋げていた。
 それが、火口には不自然に思えてならない。火口はこの社長が、どれほど“教育熱心”なのか、実際に勉強を“教えている”場面を見たことがある火口は知っている。


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