ライス・カレー-8
「楽しいよ。シュンのおかげで」
「エッ?」
何の事だか分からない駿は、訊き返そうとしたが、〈アッ!15分経ったよ〉という麗奈の言葉に遮られた。
鍋は小さな音を立てて甘い香りを漂わせていた。
「これを使おう」
駿が見せたのは市販の固形ルゥだった。
「でも、カレー粉の方が香りが……」
だが、駿は首を横に振ると、
「カレー粉からルゥを作るのは難しいからね。それよりこっちの方が簡単だよ」
「それはそうだけど……」
「じゃあ火を止めて、と」
駿は火を止めた。
「エッ?また火を止めるの」
また疑問をぶつける麗奈に、駿は諭すように答える。
「固形ルゥは火を止めた方が溶けやすいし、焦げ付かない」
駿は固形ルゥを形にそって割ると、鍋の中に入れた。
しばらくすると、確かに加熱しながらより固形ルゥの溶けるのが速く感じられる。
まんべんなく固形ルゥが溶けて、とろみがついてくる。もう、ほとんど完成だ。
駿はここで、カレーを小皿にとって味見をする。麗奈にも渡して味を見てもらう。
「どう?」
「ん〜っ、ちょっと甘いかな。それと味にパンチが……」
麗奈の意見に駿は頷くと、
「じゃあ、塩とカレー粉。それに鷹の爪を少し……」
駿はそれらを入れてひと煮立ちさせると、ガスを止めた。
そして、先ほどのインスタント・コーヒーをひとさじ鍋に加えた。
「これは香り付け。なけりゃ入れなくて良いよ」
調度その時、炊飯器がブザーを鳴らし、ご飯が炊き上がった。
夜9時過ぎ。
テーブルにチキン・カレーが並ぶ。先ほどの再現。
黄色いライスに褐色のカレーが掛かる。
「いただきます」
「いただきま〜す!」
駿が一口食べる。味に納得したのか、頷きながら口を動かす。
「美味しい!さっきと全然違う!」
麗奈の言葉に駿の顔がほころぶ。