月の満ち欠け-1
†月の満ち欠け†
月を見上げてふと思う。。私達の関係は月の満ち描けに似ていると。
「じゃあ月が見えている部分は玲で、見えないところが僕だね。」
と、隣に座っていた瞬が微笑みながら言った。
「じゃあ崇はどこにいるの?」
「…崇は月そのものだと思う。」
瞬はそう言うと、隣で寝ている崇を見つめた。
奇麗。
瞬の頬が月明かりに晒されて、青白く照らし出される。
瞬の白くて整った横顔を私は見つめた。
あぁ、私やっぱり瞬が好きだ。
再確認なんてしたくないのに―。
どんなに好きでも、瞬は私のものにはならない。
なぜなら瞬は私の彼氏を愛しているのだから。
瞬が私のものにならないなら、せめて近くに居たい。
―私、最低な人間だな。
崇に冷めた訳じゃない。顔も性格も私の中で満点に近い崇を愛しているし、感謝している。別れを望んでなどいない。
だけど、私は瞬に出会ってしまったのだ。
瞬に出会った瞬間、稲妻が身体中を走り、火の中に投げ込まれた様に体が熱くなった。
これが運命の出会いと言うのだろうか。
今までにも一目惚れをした事はあった。だけど、これ程までに衝撃的な一目惚れを経験したのは初めてだった。
稲妻が脳天に達し、正気に戻るまでの時間はほんの数秒の事だったと思う。とても長く感じられたけど、それは私にだけスローモーションのように見えていただけだったようだ。
正気に戻ってから、崇にこの衝撃的な体験をバレないように装うのに、私は必死で努めた。
なぜなら、瞬は崇の親友だったから。
崇に瞬を紹介されてから、私達はよく一緒に過ごした。
瞬が崇を好きだという事は私にはすぐにわかった。
瞬はおそらく誰にも気が付かれないように、今まで細心の注意を払ってきたのだと思う。
初めは私の勝手な憶測だと思っていた。
だけど、私は見てしまった。
瞬がふと見せた表情を。
そこに居た瞬は私だった。
瞬は、私が瞬を見ている時と同じ気持ちなんだ―。
気付いてしまった。
泣きそうになった。
それは、瞬が崇を好きだからじゃない。
瞬が、崇をどんなに好きかが、痛い程にわかってしまったから。