結界対者 第四章-21
上総町の…… この前の海岸? だとしたら、春日さんのメールを見て、間宮は海へ行きたいと言った?
いや、俺がその「好きな人」なのかどうかは別として、だ。
そこで、俺達は、あの人狼に襲われて、そしてガーゴイルが、樋山が現れた。
…――まさか、本当に願い事が叶ったっていうの?――…
仮に、間宮の願い事が、もう一度樋山に会う事だとしたら、あの言葉にも頷ける。
しかし……
なんだ、この妙な感じは。
あの海での出来事はは、本当に偶然だったのか?
間宮へ海へ行く事を勧めた、春日ミノリ。
間宮の身近で、日頃の間宮の行動を良く知る、春日ミノリ。
春日ミノリ……
「あら柊君!こんなところで、何を……?」
不意に声を掛けられ慌てて顔を上げる、とそこには……
その、春日ミノリが驚いた表情を向けながら、立ち尽くしていた!
「い、いや、これは、その……」
「あ、それ、セリの携帯じゃない! よくないなぁ、いくら彼氏さんだからって、勝手に見ちゃうの!」
「いや、違うんだ!」
「貸して!」
「え?」
「私ね、セリのお姉さんに、頼まれたのよ!セリ、具合が悪いって家に帰って来ちゃったから、悪いけど持ち物を届けてくれって」
何…… だと?
こいつ……
思わず唾を飲む、喉が鳴り鼓動が騒ぐ。
こいつは…… いや、こいつが!
「違うな」
「えっ?」
「サオリさんは、もう知ってるぜ? 間宮が消えちまった事を」
「……!」
穏やかだった、春日さんの表情が、一瞬で氷の様に固まる。
「間宮の身近で、日頃の間宮の行動を良く知る誰か、か。 まさかとは思ったけどね、携帯に残っていたメール、海に現れた人狼…… そして、死んだバカ本。 おまえ、一体なんなんだ?」
俺の問掛けに、目の前の顔がヒキツリながら歪んでいく。
そして、それは
「あはははははははっ!」
空っぽの教室に響き渡る高笑いに変わり、殺気を帯た視線と共に俺に向けられた。
「あーあ、バレちゃったか、凄いねぇ新しい旋風桜は」
「おまえ、誰だ?」
「私は春日ミノリ、それ以外の何者でもないわ。でも……」
途切れた言葉と共に、春日ミノリは物凄い早さで俺に迫り、息をつく間もなく、俺の胸元に寄り添う様な、いつのまにか、そんな位置に在った。