FULL MOON act2-6
(きっと…私は……)
「ねぇ、安西さん。この後さ、安西さんの家行っていい?」
「…?何でですか?」
彼は私がボーっとしている間に情事の後片付けをしていてくれたらしく、
先程までいた暗がりの中から出てきた。
「何でって…。俺、安西さんのこと、本気で好きだよ」
「!…で、でも、私…」
「彼氏と別れたばっかだし…ってヤツ?でも、もう俺のこと好きでしょ?
俺のこと思ってしてくれてるなんて、嬉しかったよ」
「…そうだけど…。でもうまくいく自信ありません…高坂さんモテるし、バイト先のみんなに
隠せるか分からない…」
「…大丈夫だよ、二人の気持ちが離れなければ…」
「……はい」
そうして彼は私を抱きしめた。相変わらずの彼の香りは、今は安心感として私に漂う。
思わず涙があふれる。彼に悟られないように胸にギュッと顔を押し付けた。
「ねぇキス、しよ?」
私は何も答えず、彼を見上げる。肯定を目で伝えるんだ。
今宵は三日月。あの夜のように彼の顔を照らしはしないけれど、
店内の光と相まってすごく、いい感じ。
チュッ…
可愛らしい音がして私たちは顔を見合わせて、笑った。
「汚いですけど、こんな家でよければ…」
「汚くないよ。嬉しいな家来れて…」
彼はご機嫌なようで、鼻歌をフンフンと歌っている。そんな様子が可愛く見えてしまう。
完全にはまる一歩手前だ。
「雨にぬれちゃってさ、シャワー先に借りていい?」
「あ、はい」
この部屋に男性を入れるのは元カレ以外で初めて。
ブブブブ…
彼がシャワー浴びている時、ポケットの中のケータイが揺れた。
(誰だろ…こんな時間に)
名前を覗き込む。
「え…!?」
『西野啓太』
――――元カレだ…。