平和への道のり〜Prologue〜-5
アビルとイラン軍高官の上に倒れた迷彩服達を、女は次々とひき剥がしていく。
(なんて力だ!)
意識の無い人間を抱えたりするのが、どれほど大変かを藤田は知っている。しかも、屈強そうな迷彩服達はどう見ても体重90キロは越えている。それを彼女は軽々と抱えたのだ。
ディスプレイに彼女が写る。ブルネットの髪に大きくきれいなブルーの瞳。実に美しいと藤田は思った。
女は倒れたアビルとイラン軍高官を覗き込んでいる。
2人共、頭を抱えて伏せたまま動こうとしない。
アビルの耳元で女は囁いた。
「あんたみたいな臆病者がPLFのナンバー2じゃ、死んでいった同胞達が浮かばれないわ」
そう言った女の手には、コルト・ポケット・モデルが握られていた。
アビルとイラン軍高官は、慌てて振り返った。女が銃を構える。
「シャローム」
2発の弾が発射された。
2人は眉間の真ん中を撃たれて息絶えた。
爆発の煙が立ち昇る中、女はフードを再び被ると闇に紛れて姿を消した。
藤田の全身は震えていた。
暗殺の一部始終をビデオカメラに収めたのだ。
…「平和への長い道のり〜Prologue〜」完…