雪の夜-5
オレは振り向かずに歩いた。いつの間にか涙がこみあげてくる。
溢れないように上を向くと、アイツの言った言葉が浮かんだ。
〈アナタのようになるから〉
(オマエ、知らんかったんだな。オマエ、輝いていたんだぞ……)
オレは振り返りたい衝動を抑えて、雪の降る街を帰った。
アナタの後姿を眺めながら、掛けられたコートを匂う。
体臭にタバコの匂い。
私はバッグからハイライトを取り出すと、再びくわえて火をつけた。
咳込みながら、吸い続ける。
涙が頬をつたって落ちる。
アナタが見えなくなった。
私はタバコをもみ消した。
私の長い青春がピリオドを迎えた。
…「雪の夜」 完…