雪の夜-4
「ごめんなさい」
私は化粧を直して、努めて明るくアナタに言った。
「アナタの気持ちは分かったわ」
私は右手を差し出した。
アナタは何も言わずに私の手を握り返す。少し遠慮して。
オマエの顔をまともに見れない。
握るオマエの右手は冷たく、顔は笑おうとしているが、眼が深い悲みに満ちている。
オマエはオレの手を、左手で撫でながら言ったな。
「ねぇ、見てぇ!」
突然、驚いた声と共に窓の外を見つめるオマエ。オレはつられて見た。
窓の外はハラハラと雪が舞っていた。
オマエは薄く笑うと、おどけた表情をオレに見せて、
「2人の関係も真っ白にしてくれないかしら」
その言葉、オレには笑えない。
2人で喫茶店を出る。
かなりの雪が天から舞い降りていた。
オレは着ていたコートを脱いでオマエに着せる。オマエは少し驚いた表情を見せたが、すぐに笑顔に戻ると、
「シュウ、先に歩いていってよ」
「エッ?どういう意味だ?」
「ここでお別れしましょう。シュウは行って。私はそれを眺めていたいの」
「美津江……」
「修一。いままでありがとう」
「……」
「修一、いつも輝いていたね。でも、私も頑張るから。
いつか、アナタのようになれるように」
私は彼の唇にキスをした。
別れのそれは長く感じられる。
お互いの唇が離れる。
「さあ、行って」
アナタは頷くと、私に背を向け歩き出した。
だんだん離れていく姿。
(行くなあぁぁーー!!)
告げそうになる。
慌てて喉を押さえると、堪えていた涙が溢れてきた。
もう止まらない。
修一の姿が滲んで見える。