記念日(12月21日Ver)-1
世の中にはたくさんの記念日があります。
皆さんは、どのような記念日をご存知でしょうか?
例えばそう…12月21日は?
たった1年。
そう、それを乗り越えればまた一緒にいられる。
あたしと先輩はいろいろあったけど、去年のクリスマスからきちんと付き合いだした。
だけど、一緒にずっといられたのはたった3ヶ月。
先輩はうちの附属の大学へと進学。
あたしは1人ここに残された。
来年の4月には、あたしも同じ大学に通うのだけど。
いつもの帰り道。
賑わう街並み。体を寄せ合う恋人達。
ツリーには灯が燈りクリスマス一色となった街並みを見ていると切なくなる。
どうして自分の隣に先輩はいないのか、恨めしく思ってしまう。
あたしの横にいて欲しい。
大きくて温かい手を繋いで欲しい。
いつもの優しい笑顔が欲しい。
あたしは何時からこんなにも欲深い人間になってしまったのだろう。
そんな事を思いつつ白い溜め息を吐く。
鞄のポケットに入れてある携帯から聞きなれた着信音が鳴る。
まるで自分の浅ましい気持ちが読まれてしまっているようで慌てて電話に出た。
「もしもし?…柚香?」
先輩の声。
どきどきの中で、ほっ…とする。
「先輩…。」
瞳を閉じて、耳を澄ませる。
そうすればまるで先輩が横にいるような錯覚に陥れるから。
「今、どこにいるの?」
いつもの声。どうやら外から掛けているらしく街の騒音も聞こえてくる。
「あ、駅前の公園あたりを歩いてました。」
そう告げると先輩はふうん、と相槌を打ち
「懐かしいな。」
と言った。
『懐かしい』その一言が胸に突き刺さる。
それは、なんだか過去の事を言われているようで。
まるで自分も過去の人にされてしまったような気がして。
「…そうですね。」
こう返すのが精一杯だった。
「大丈夫?」
なかなか返事を返さないあたしを怪訝に思ったのか先輩が心配そうに声を掛けてきた。
「ぜんっぜん平気です。」
先輩を安心させたくてわざと元気なふりをする。
「なんだ、残念。俺なんて柚香に逢いたくて仕方ないんだけどな。」
胸からすとん、と何かが落ちた。
たった一言で自分の我慢の糸が脆くも切れる。
「そばに…いて欲しいです。」
一番伝えたかった言葉。
一番叶えたい望み。
「了解。」
嬉しそうな声が聞こえた。
了解…?
すると突然背後からふわり、と柑橘系の匂いに優しく包まれる。
「クリスマスまで待てなくて、会いにきた。」
12月21日は「遠距離恋愛の日」
遠距離恋愛中の恋人同士が、クリスマス前に会ってお互いの愛を確かめ合う日。「1221」の両側の1が1人を、中の2が近付いた2人を表しています。
Fin